CREDIT

Planning & Produce: co-lab, Ground Level Inc.
Direction: 熊井晃史 | Operation: シアターワークショップ | Graphic Design & Edit & Writing: BAUM LTD.

OVER VIEW

これからの広場・都市はどうあるべきか?
街ゆく人のふるまいから探る2年目の試み。

1 周年祭以降、一層独自性を高め、さまざまなクリエイターとコラボレーションしながらイベントを展開してきた渋谷キャスト。
他方で、渋谷キャストの顔となっている「広場」では、お昼時に近隣で働く人たちがお弁当を食べていたり、夕方近くになると小学生が働く大人たちを横目に宿題をしたり、走り回っていたり。渋谷キャストのスローガンである「WORK, LIVE, PLAY」が体現される場となっていました。

「渋谷にある広場」として、訪れる人々の創造性を誘発し、街に新たな価値を還元するような試みを行ってきましたが、そうして見えてきた「あるべき広場像」「あるべき都市像」をより醸成させるべく、2周年祭の検討は進められました。
この年は、施設運営メンバーを中心に開催された1周年祭とは体制を変えて、これまで渋谷キャストにて企画を展開したクリエイターたちとともに、ひとつのイベントをつくり上げる形に。日頃から渋谷キャストに関わる運営メンバーと、街やパブリックスペースのあり方を模索するクリエイターなど、それぞれの視点を持ちながら、渋谷キャストを舞台に都市のこれからを考え、育む機会を目指しました。

Readable!!

デベロッパー、運営、街の人々と問う、理想の街とは?

渋谷における広場とは、街に必要な空間とは、過ごして楽しい街とは何か。
2周年祭はこうした原初的な問いに立ち返り、解に近づくべく、目の前の街や風景を「読み解く」ことをテーマとして「Readable!!」と掲げました。
街を読み解くという、ややアカデミックにも感じられるものを、大人から子どもまで訪れる一複合施設のイベントテーマとした背景にはある建築家の言葉がありました。

“都市とは、その通りを歩いているひとりの少年が、彼がいつの日かなりたいと思うものを感じ取れる場所でなくてはならない”

これは、20世紀の建築家の巨匠ルイス・カーンが、良い都市とは何か?という問いに対して答えた言葉です。街に出ると、自分の暮らし、生き方、人生について考える機会が溢れている。そうある街をひとつの理想と唱えました。
では、それを叶えるためにはどうすれば良いのか。こうした理想像を拠り所に、企画の検討は進んでいきました。

「良い街とは何か」といった問いは、デベロッパーや運営側だけでなく、住み、働き、遊ぶ、街の人々への問いでもあります。「街でどういったことができると楽しいのか」それに気づくことで、街に対して本当に求めることがわかり、あるべき姿も見え始めていきます。
そうした気づきのきっかけとなるのが、しつらえられた楽しみを受容するのではなく、訪れる人々が自ら場を読み解き、自分なりの考えや遊びを得ること。それは、制約の多い都市の中で多様な過ごし方を受け入れる渋谷キャストだからできることであり、渋谷キャストこそやるべきこととして2つの企画が推し進められました。

CONTENTS

1. SHIBUYA “YOUR” PARK

こんな渋谷の過ごし方、はじめて!

Produce: Ground Level Inc. / Design: 長岡勉(POINT)/ Construct: 三輪ノブヨシ

大階段と広場では、「1階づくりはまちづくり」をテーマに「人・まち・日常」をアクティブにする株式会社グランドレベルによって、これまでにない渋谷での過ごし方を体験できる場が企画されました。
この企画の背景には、多様な人々が行き交う渋谷の街において、お互いに「自由・多様・許容」でいられる環境が一人一人の創造性を誘発するという仮説がありました。そうした仮説のもと、渋谷キャストの広場というオープンで実験的な場を生かして、その3つの要素のある光景を生み出すことを目指すことに。
「自由・多様・許容」の実現に向けては、以下のことを考慮してアウトプットの形が検討されていきました。

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「自由・多様・許容」がある光景とは
1. 一人一人の能動性を誘発する補助線がある
2. 行動を一様にしない余白がある
3. 誰もが居場所をつくることができる可能性がある
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あくまで人々のあらゆる行動や体験のきっかけとして、楽しそうと直感的に思って入ってみると、思いもよらぬ奥行きが見えてくる。そんな場をつくるために、さまざまな見立てができるアクティビティ・ツールが展開されることとなりました。

建築家・長岡勉氏によってデザインされたアクティビティ・ツールは、祝祭感がありつつ、自由度の高い使い方ができるものとなりました。


▶︎ ”YOUR” HILLS ”YOUR” STAGE - 階段にできた丘と舞台

渋谷キャストの象徴的な大階段は、丘のような斜面へと変身。滑ったり寝転んだり、記念撮影もできる仕掛けがちりばめられました。
「階段を滑るってどんな感覚なんだろう」「今しかできなさそうだからやってみたい」
その非日常な光景に誘われて、子どもはもちろん、大人も滑って遊ぶ人が続出。純粋な好奇心を掻き立てて、普段はしないようなことに踏み込むきっかけとなりました。


▶︎ ”YOUR” STOOL - 一緒にくつろぐ相棒たち

広場には、大小さまざまなバウムクーヘンのようなスツールを設置。
このスツールは椅子やテーブルはもちろん、おもちゃや楽器、潜り込んで小屋にすることもでき、街ゆく人それぞれが思い思いの過ごし方を創り出していました。

また、自分が楽しいことを無料でふるまう「マイパブリッカー」たちも登場し、マジックやバルーンアート、DJや場の即席新聞などをふるまいます。流れる音楽に合わせて即興で子どもが踊り始めたり、歌を披露し、それに呼応する形でアカペラが始まるなど、偶発的なグルーヴ感が発生していました。
広場を通して生み出された「自由・多様・許容」のある光景は、渋谷キャストを賑わいで包み込み、広場のあるべき姿を感じさせる機会となりました。


2. 202X URBAN VISIONARY vol.01

クリエイティブ思考で未来の都市を考える

Produce: co-lab / Graphic Design: hooop

クリエイティブ思考で都市の未来を提案し、各ステークホルダーとともに先見的な議論を展開していくトークセッションシリーズ「202X URBAN VISIONARY」が初めて開催されたのはこの年でした。
これは日本の都市開発においては、あらゆる立場間でビジョンを共有し進めることが大切という考えのもと生まれた企画で、官民さまざまなステークホルダーと意見を交わしながらともに実現に向かっていくプロセスを展開していく場となりました。
登壇者には、前身となる昨年度周年祭のイベントでスピーカーを務めた4名に加えて、各エリアで都市開発、エリアマネジメントを行う森ビル、三菱地所、三井不動産など大手ディベロッパー担当者、国土交通省の行政関係者など、競合とされ、公の場で一堂に会することが滅多にないメンバーが集まり白熱した議論が繰り広げられました。

合わせて、ライゾマティクス齋藤氏とnoiz豊田氏による、東京や渋谷の未来の都市ビジョンを表現したインスタレーションも展示され、今後の示唆に富んだ企画となりました。

photograph : KANKI

3. Installation

架空の都市空間を体験

Direction: Rhizomatiks(202X CRYPT CITY) / noiz(Hyper SHIBUYA CAST.)

▶︎ 202X CRYPT CITY

202Xに向けて開発が進む東京都心部に対して、進んでいる建設は止められなくとも、もっと良い東京を残すことはできないかという課題提起から生まれた作品。日経アーキテクチュア提供のリサーチデータを活用し、今の東京と個人妄想を投影した202X年の東京を表現したインスタレーション。

▶︎ Hyper SHIBUYA CAST.

現実的な制限を取り払った未来の都市像、仮想的な「あり得た」形のひとつ、「Hyper SHIBUYA CAST.」。noizは、法規やコスト、技術の制限によって、あるべき未来の都市像を体現しきれていない現在の渋谷の姿から、現実的な制限を取り払った仮想的な都市像を表現。



大階段は斜面になり、一風変わったスツールが散りばめられた広場、前代未聞のディベロッパー対談や未来の都市像を描いたインスタレーションなど、渋谷キャストらしさがありつつ挑戦的な試みが多かった2周年祭。
挑戦的なイベントというものは成果が未知数ですが、まだ見ぬ都市の姿を切り開いていくためには必要不可欠なこと。結果として、訪れた人々の創造性が発揮され、新たな姿を生むことができ、渋谷キャストの実験性が深まったイベントとなりました。

CREDIT

Planning & Produce

co-lab / Ground Level Inc.

Direction

熊井晃史

Operation

シアターワークショップ

Graphic Design & Edit & Writing

BAUM LTD.