1. PLAY DISTANCE - MAKE PUBLIC –
2メートルのディスタンスを、遊びに変えて楽しむ。
偶然性と主体性を高める、色鮮やかな仕掛けの数々
Produce: Ground Level Inc. / Design: 長岡勉(POINT)
デザイン制作サポート: VUILD / EMARF
ワークショップ:みんなのダンボールマン
Photo:YUKA IKENOYA(YUKAI)
広場の企画を担当したのは、2周年祭の「SHIBUYA“YOUR”PARK」、未開催となった3周年祭では「MAKE PUBLIC」を企画し、これまでにない広場の使い方と楽しみ方を提案してきたグランドレベルの田中元子氏と大西正紀氏です。
「1階づくりはまちづくり」を掲げる彼らが、人と人の物理的なふれあいやつながりが失われる状況を目の当たりにしてきた中で、今回挑んだのは「ディスタンスを遊びに変える」こと。やむを得ずとも人と人を引き離してしまう“2メートル = ソーシャルディスタンス”も、
クリエイティビティの力で人とのつながりを感じられるものとして考え直す、という試みです。
グランドレベルのビジョンの元、建築家の長岡勉氏と共に具体的な構想がはじまりました。初期の構想では、身の回りにあるものを2メートルに引き延ばし、「距離をまとう」「距離を拡張する」など、距離を遊ぶ仕掛けがさまざまな形でユーモラスに検討されていました。
この仕掛けが実際に広場に登場すると、あたりは一面鮮やかな世界へと様変わり。2メートルのキオスクに糸電話、ツリーなど、ユニークで複雑な曲線と形で構成されたオブジェを横目に、思わず立ち止まる人の姿も見受けられました。
こうした造形は、VUILD株式会社が提供する、デジタルファブリケーション技術を用いたサービス「EMARF(エマーフ)」を活用することで実現しました。
一角では、身近なダンボールを使ってクリエイティブなアイデアを共有していく「みんなのダンボールマン」によるワークショップを開催。
お面のような小さなものをつくったり、大人と協力して2メートルの巨大な帽子をつくったり、笑い声と笑顔のたえない空間がひろがります。 隣には、ダンボールでつくったオリジナルの扇を投げて遊ぶ「投扇興」のブースもあり、子どもたちが続々とチャレンジしていました。
こちらは「DISTANCE MONSTER」と名付けられた、2メートルのオブジェです。地面には花のような形にカットされた木片がたくさん。 これらをオブジェのくぼみにはめたり、木片同士を自由にはめて枝のようにしていくと、その名の通りモンスターのような、不思議なかたちが空へと伸びていく仕掛けになっています。
その隣には、メッセージを書いたテープをくくりつけられる2メートルのツリーが。自分のこと、家族、友達、社会のこと。先の見えない状況で、街ゆく人々が抱えるひとつひとつの思いが、春の風になびき、幻想的な空間を作り出します。
「PLAY DISTANCE」で印象的だったのは、時間の経過と人の流れにともなって、空間が徐々に「活きた場」へと変化していくこと。空間を自由に遊ぶ子どもや大人たちの姿に、仕掛けを手がけたデザイナーやプランナーも思わず目を細める場面もありました。
2周年祭で開催した「SHIBUYA“YOUR”PARK」でも、広場のスツールや楽しいことを無料でふるまう「マイパブリッカー」たちを介した、人々の即興的かつ自由なふるまいが見られました。今回はそれらがさらに強まり、偶発的なコミュニケーションがいくつも生まれる空間となっていたのではないでしょうか。