SHIBUYA CAST./渋谷キャスト

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PEOPLE
2017/04/20
CAST People#3

小さなスペースだからこそ
おもしろくて挑戦的なイベントができる

丸山健史さん 株式会社シアターワークショップ 統括マネージャー
小さなスペースだからこそ おもしろくて挑戦的なイベントができる

4月28日、いよいよ開業を迎えるSHIBUYA CAST.(渋谷キャスト)。オープンから10日間にわたって、カルチャー、アート、音楽、食など、さまざまなジャンルのイベントが開催されます。このオープニングイベントを支えるのが、会場となる多目的スペースと広場の運営を担う(株)シアターワークショップの丸山健史さん。ヒカリエホール・カンファレンスの運営を開業前から担当し、渋谷と縁の深い丸山さんに、渋谷キャストだからできること、その可能性について話を聞きました。
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丸山健史さん 株式会社シアターワークショップ・統括マネージャー
早稲田大学第二文学部在学中に同社代表の伊東正示氏と出会う。卒業後、映像制作会社に就職し、雑誌、ラジオ、テレビ番組など多様な媒体の立ち上げに携わる。その後、文化エンタテインメント担当として都市開発プロジェクトに参画した後、渋谷ヒカリエの開業を機に同社へ。施設運営部門の発足時から統括マネージャーとして活動中。

 

PHOTOGRAPHS BY Kazue KAWASE (YUKAI)
TEXT BY Atsumi NAKAZATO

渋谷キャストの日常を体感できるオープニングイベント

 

多様なクリエイティブ機能を持つ渋谷キャストのコンセプトそのままに、個性や才能が結集するオープニングイベント。個性的なインディーズ・ブランドが集まる「SHIBUYA DESIGNERS MARKET」、旧式のオープンリールテープレコーダー複数台を楽器として演奏する「Open Reel Ensemble」のパフォーマンス、注目のブランド食材「江戸東京野菜」の魅力を紹介するフードマルシェ、世界で活躍するアーティスト・クリエイターたちのアートを体験できるワークショップなど、渋谷キャストの自由でクリエイティブな空気を体感できる企画がそろいました。

 

イベント全体を支える丸山健史さんは、このバラエティの豊かさについてこう話します。

 

「オープニングイベントは、渋谷キャストの“日常をお披露目する場”だと思っています。こんなイベントが年間を通して行われる、ちょっと変わったおもしろい施設だなと思ってもらいたい。多種多様なイベントがこれだけたくさん集まることが、“渋谷キャストらしさ”だと思いますね」

 

ジャンルもさまざまなイベントは、渋谷キャストに入居するクリエイターや企業、つながりのある外部のプロデューサーなどの協力を得ながら、作られていきました。

 

「デザイナーズマーケットは、渋谷キャストの1Fと2Fに入るシェアオフィス『co-lab』の会員さんにお声がけして、江戸東京野菜のフードマルシェはつながりのある外部のクリエイターさんから提案いただいた企画をもとに、それぞれ実現しました。施設内だけでなく、外部のリソースをミックスしながら作り上げることを大切にしています」

 

開業から10日間にわたるオープニングイベントは、渋谷キャストの日常をいち早く垣間見ることができる絶好の機会となりそうです。

 

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ヒカリエホールにはない、小規模ならではの魅力

 

子どもの頃から劇場やホールでお芝居を見たり、音楽を聴くことが好きだったという丸山さん。大学時代に劇場人養成講座を受講したことが、劇場運営の道に進むきっかけとなりました。当時の恩師が、シアターワークショップ代表の伊東正示さんです。2011年夏、伊東さんから声がかかったことで、ヒカリエ準備室のスタッフとなり、開業後も管理運営を担当。5年間にわたって再開発が行われる渋谷に密着してきました。

 

「渋谷ヒカリエは渋谷の再開発のリーディングプロジェクトで、お兄さん的存在。しかも渋谷駅直結で最大収容人数1000人を越える規模の大きさはイベントホールとして圧倒的です。ヒカリエホールはこの5年間で急成長して、すごいイベントホールになってきたなという実感があります」

 

そんなヒカリエホールと比べて、渋谷キャストの多目的スペースの特徴はどんなところにあるのでしょうか。

 

「何と言っても、規模が小さくて小回りが利くところです。収容人数は100人程度ですが、金額的にも利用しやすいので、ヒカリエではできなかったような小規模なイベントも気軽にできていくんじゃないかなと思います。予算は少ないけど、おもしろくて挑戦的なイベントがどんどん生まれていきそうです」

 

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もう一つの特徴は、広場の存在です。渋谷駅の周辺にはこれまで人々が憩うことができる広場がほとんどありませんでした。開業後は周辺で唯一の大きな広場として、多様な人やものが集まる拠点となりそうです。

 

「広場も含めて一帯的に運用するというところが、これまでのホール運営と大きく違います。会社としても広場の運営は初めてで新たなチャレンジです。広場としては渋谷のリーディングプロジェクトになるので、固定概念にとらわれない運営をしていきたいですね」

 

広場の利用に関する問い合わせはすでに多く、「いいスタートダッシュが切れそうです」と丸山さんは話します。また多目的スペースと広場は同じ階層にあり、自由に行き来しながら利用してもらうことも視野に入れています。

 

「たとえば広場にキッチンカーが来た時に、雨が降っていたら外で食べづらいですよね。そんな時に多目的スペースが開いていれば、ランチの場として利用してもらうことも考えられます。ただイベントを行うだけでなく、周りの状況を見ながら、利用する人たちにとってよりよい提案をしていきたいと思っています」

 

こうした柔軟な使い方ができるのは、それぞれの施設との距離が近いからこそ。大きすぎず、全体が見渡せるスケールの渋谷キャストでは、オフィス、住宅、ショップとの連携がしやすく、横断的に使用できることも魅力です。

 


“つなぐ”ことで、力は何倍にもなる

 

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多目的スペース・広場を運営する実動部隊となるのは、「つなぎ隊」と呼ばれる3人の常駐スタッフ。「co-lab」や上層階にある賃貸住宅に入居するクリエイターや店舗のオーナー、地域を“つなぐ”ことで何倍もの力を発揮させる、渋谷キャストのイベントの要となる存在です。予約の受付や本番立ち会いなどの管理業務のほか、自主イベントの企画・運営も行います。「毎日空きが出ないようにブッキングをすることも大切ですが、いかに楽しくおもしろくやるかも重要」と丸山さんは話します。

 

「渋谷キャストに関わる個性豊かな多くのプレイヤーをつなぐことはひと筋縄ではいきません。“船頭を多くして船進まず”という言葉がありますが、それぞれがいろんな方向を見ていながらも、コンセプトを共有し、船自体は着実に前へ進んでいることが大切だなと。僕らの役割は縁の下の力持ちとして、多様な才能が存分に発揮される場を作ることだと思っています」

 

新しいものごとを発信し続けるためには、内部だけでなく外部のリソースを生かすことも大切。そこで外部のアドバイザーとして、シブヤ大学学長の左京泰明さん、「愛・地球博」のプロデューサー等を務めた福井昌平さん、「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」総合ディレクター等の栗栖良依さん、日本と欧米のメディアアートの相互紹介等を事業としている羽生和仁さん、米国・ポートランドのまちづくりに精通し、商業・都市開発を手がける吹田良平さんなどに協力を依頼しています。「ヒップスターが集まる街・ポートランドと渋谷キャストのクリエイターの交流なども実現させていきたい」と抱負を語る丸山さん。外部の起爆剤を織り交ぜながら、内部のクリエイターなど、あらゆる人とものをつなぐ。これも「つなぎ隊」の役割です。

 

「つなぎ隊」の一人は渋谷出身で、「地元の盛り上げに一役買いたい」と自ら手を上げて抜擢されたそうです。こんなことからも、「つなぎ隊」の渋谷の街への愛情が感じられます。

 


地元の人が集まれる、地域に根ざしたお祭りも

 

オフィス、住宅、カフェ、ショップと多様な機能を持つ渋谷キャストでは、クリエイター、住人、オフィスワーカー、地域の人など、行き交う人もさまざま。あらゆる過ごし方に合わせた自主企画イベントを予定しています。

 

クリエイター向けのイベントとしては、「co-lab」の会員によるトークイベントや、お酒を飲みながら交流できる「クリエイターズナイト」、ベンチャーキャピタルやオーナー企業、クリエイターが集まるラフなスタイルのビジネスマッチングイベントにも挑戦していきたいと話します。

 

「渋谷キャストは新しい働き方の提案の場でもあると思うんです。住宅とオフィスが同じ敷地内にあって“職住近接”であることはまさにそうですよね。日本では朝会社に行って残業して、夜は上司と飲みに行って、というのが当たり前ですが、こうしたイベントを通して、既成概念を取っ払うような“新しい働き方のスタイル”を提案したいです」

 

住人やオフィスワーカー向けには、朝の時間に行うガーデンヨガなど、日常的に参加できるような気軽なイベントを定期的に開催します。また、“夏祭り”のような地域に根ざしたイベントを行うのも、エリアの活性化をめざす渋谷キャストならでは。季節ごとに幅広い年代の人たちが集えるような企画を考えているそうです。

 

「住宅が併設している強みを生かし、住人であるクリエイターと一緒にアイデアを出し合いながら、渋谷キャストらしいお祭りを作っていきたい。こうしたイベントを通して、地域の人と渋谷キャストの住人をつないでいきたいですね。そして、『あそこは大体おもしろいことやってるよね』『一回は行ったことあるでしょ』と日常の会話に出てくるような、感度の高い人たちに常に注目される場所にしていきたいと思っています」

 

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