ジャーナル
大人のストリート「ラグスト」を発信
「渋谷キャスト」唯一のアパレルショップ「PULP 417 ÉDIFICE」。「JOURNAL STANDARD」など人気ブランドを手がけるベイクルーズによる新業態のセレクトショップです。多様なカルチャーが生まれてきたキャットストリートから発信するのは、新旧が混ざり合うこれからの時代のストリートスタイル。メンズ・レディースの境界線をなくしたニュートラルな空間で、音楽カルチャーを背景としたアイテムやスタイリングを提案しています。同店のコンセプトやアイテムの特徴、こだわりなどについて、店長の青木将訓さんに話を聞きました。
PHOTOGRAPHS BY Kazue KAWASE (YUKAI)
TEXT BY Atsumi NAKAZATO
新旧のストリートとモードの組み合わせが「カッコいい」
「PULP 417 ÉDIFICE」が提案するのは、新旧のストリートとモードの融合。そのキーとなるのが、ここ数年、世界の主要都市を席巻してきた新たなファッションスタイル「ラグジュアリーストリート」です。新進気鋭のストリートブランドにハイファッションブランドのアイテムをミックスしたスタイルで、通称「ラグスト」と呼ばれます。
モノトーンを基調に、ビッグなトップスとタイトなボトムスでメリハリをつけたり、90年代のヒップホップスタイルのように全身をルーズにまとめたり。ストリートファッションにモードの要素を取り入れたスタイルは、「大人のストリート」と言えます。
「お店のコンセプトは、新時代系のストリートとオーセンティックなストリート、そしてモードをごちゃまぜにするということ。『PULP』には『ドロドロしたもの』という意味がありますが、それがそのままブランド名になりました」
もともと「417 ÉDIFICE」の店舗でスタッフとして働いていた青木さんは、「これまでラグストというジャンルにはなじみがなかった」と言います。ベイクルーズとしても初めて手がける異色のジャンルのため、「417 ÉDIFICE」の既存店の店長やスタッフからは戸惑いの声も多かったそうです。そんな中、「新しいジャンルに挑戦したい」という思いを持っていた青木さんは、店長の打診があった時に即決しました。
「もともとアメリカ寄りのストリートがすごく好きだったんです。それにこのエリアも大好きだったので、ここでラグストという新たなジャンルに挑戦するというのはやりがいあるなと思いました。新旧のストリートとモードを自分なりに組み合わせてみて、『これはカッコいいな』と思えたことも大きかったですね」
お店のコンセプトを体現するために、青木さん自身は日々どんなことを心がけているのでしょうか。
「ベイクルーズの新ブランドとして広く認知していただくためにも、自分自身がアイコンになろうと思っています。オープン当初は髪を三つ編みにしたり(笑)、この店にいる時は『トップスは黒しか着ない』と決めていたり。お店を表現する上で、黒はキーカラーになってくるので、必ずメインで着用するようにしていますね」
冒険心をかき立て、新たな自分を発見できるスタイリングを
キーカラーの黒と白のモノトーンでまとまった空間には、レトロなラジカセをところどころに配置するなど、まさに新旧をミックスした遊び心が満載。1階はiphoneケースやBluetoothスピーカー、サングラスなどトレンド感のある雑貨類が中心で、好きな生地の色とサイズ、絵柄を選んでその場でプリントしてもらえるTシャツのカスタマイズサービスもあります。
2階にはオリジナルブランド「PULP」のほか、厳選された国内外のラグスト・ブランドのアイテムが集結。まだ日本で認知されていないブランドを広く知ってもらおうと、アイテムと対応するようにブランド名が掲示され、ギャラリーのような感覚で店内を巡ることができます。
「今シーズン限りで活動休止が発表されたNYの『HOOD BY AIR』や90年代に日本でもブームを巻き起こした『GUESS』のほか、日本でここでしか手に入らない日本初上陸のブランドも多いですね。国内外や新旧を問わず、ラグストをキーワードに今最も旬なブランドが集まっています」
さらには、国内外の有名アーティストとコラボレーションし、音楽カルチャーを背景にした商品の展開もどんどん進めていくそうです。
ラグスト好きからラグスト初心者まで、国内外からさまざまな人が訪れる同店では、コンセプトやアイテムだけでなく、接客にもベイクルーズの他店舗とは違った雰囲気を感じます。
「例えば、『417 ÉDIFICE』はジェントルマンな接客が主流ですが、この店ではお客様の雰囲気に合わせて、フレンドリーな接客を心がけています。一人のお客さんに一人のスタッフが対応するのではなく、みんなで和気あいあいと会話できるようなアットホームな店づくりを行っています」
ラグストというスタイルは、初心者が挑戦するにはハードルが高そうなイメージがあります。初めての方にはどんなスタイルを提案しているのでしょうか。
「いきなり奇抜なものに挑戦するのは難しいので、Tシャツを着ているお客様にスキニーパンツを提案してみたりと、取り入れやすい範囲内で冒険の後押しになるようなアイテムをおすすめしています。普段着ないものを着ると最初は違和感がありますが、鏡の前にしばらく立っていると不思議と慣れてくるんです。冒険心をかき立てることで、新しい自分を発見してもらいたいなと思っています」
冒険心をくすぐるような接客を通して、ラグストにハマる人は次第に増えています。
「以前働いていた『417 ÉDIFICE』で接客したことがある、ラグスト初心者のお客様がカップルで来られたのですが、ご提案したフェイクレザーのサルエルパンツを試着すると、まさにハマってくださって。彼女さんも『今までとは違って新鮮』とすごく気に入ってくださいました。その後も何度か来店し、少しずつアイテムを買い足されています。このお店でラグストに目覚めて、リピートされる方が増えているのがとてもうれしいですね」
場所の力と斬新なスタイルが、新たなカルチャーを生み出す
商品の入荷やイベントの情報などは、instagramで発信中。青木さんはその反響の大きさを日々実感しているそうです。
「多くのお客様はお店のアカウントだけでなく、僕たちスタッフ個人のアカウントも見てくださっています。そこでアップしている私服などを見て、『これがほしい』と買いに来てくださるお客様がとても多いんです。それほどフォロワー数が多いわけではないんですが、こんなことは初めての経験ですね。今の時代のファッションの中で、ラグストは『一度染まった人は簡単には抜け出さない』と言われる最も太くて強い部分。instagramの反響の大きさからも、そのことを実感しています」
オープンからここまでを振り返り、印象に残っていることや手応えについて、スタッフの浅井なつみさん、阿部聖也さんにも聞いてみました。
「このエリアはファッションや音楽の業界の方々が日常的に行き交っていて、とても刺激になります。スタッフ同士の仲もいいので、店内はいつも楽しい雰囲気です」(浅井さん/写真左)
「ラグストになじみのなかった方がふらりと来店されて、『まずは一点』と選んでいただくことが多いです。キャットストリート独特の雰囲気に冒険心がかき立てられてしまうのか、場所の力を実感しています」(阿部さん/写真中央)
今後も国内外の新鋭ブランドのアイテムが続々と入荷する予定です。「自分たちが本当におもしろいと思うブランドを開拓し、いち早くお伝えしていきたい」と話す青木さん。
ラグスト・スタイルの最新系を発信する「PULP 417 ÉDIFICE」には、新たな冒険と出会いが待っています。