ジャーナル
<EVENT REPORT>
デジタルアート×ギャル×レトロゲーム… 個性炸裂する盆踊り
『BON CAST.2019』
肌を焼く暑さが峠を越え、気持ち良い夜風がそよぐ8月20日。渋谷キャストでは夏恒例の盆踊りイベント「BON CAST.」が開催されました。
歴史を振り返ると鎮魂や娯楽、村民の結束を強める役割を果たしてきた盆踊りですが、渋谷キャストでは、住むエリアも年齢も国籍もバラバラな人たちが踊りをともにして、夏のひと時を楽しむイベントとなりました。
渋谷の真ん中で行われた、ピースフルな盆踊りの様子をレポートします。
まだ日の明るさが残る17時。広場では、盆踊り本番前に踊りのレクチャーとして踊り子さんたちによる振り付け講座が行われていました。練習ながらも本番通り音楽を流すと、すっかりお祭りムードに。音楽につられて、通りがかった人たちも広場に吸い込まれていきます。
大階段では、きらびやかな光線が目に飛び込んできます。そこで行われていたのは、電子工作ユニット「ギャル電」による光るサンバイザー作り。“電子工作×ギャル”という異質な掛け合いでデジタルアートを展開する彼女たちが直接レクチャーしてくれます。派手な容姿ながら丁寧な手取りではんだごてを教えるワークショップは、ひときわ目を引く空間でした。
参加者は親子連れや若いカップルなどさまざま。はんだづけとプログラミングの工程を経て出来上がった光るサンバイザーは、被るとギャルマインドが宿ったように、年齢を問わずテンションをアゲていました。
広場には夏祭りよろしく、かき氷やチキンを提供する出店、手品や昔ながらのピンボールゲーム台、ヨーヨーすくい、といった縁日が展開。
レトロな木製ピンボールゲームも、小さい子どもたちの目には新鮮に映ったよう。遊び方を教わり、勢いよく弾かれたピンボールの描く弧を見つめ、欲していた景品が当たると大喜びでした。
隣には珍妙で好奇心をそそられる見慣れないおもちゃを販売する屋台も。「プー!」と音がなるそれに魅了され、子どもたちに大人気のようでした。
広場の中央にドンと立つ祭りやぐらと活気に誘われ、広場には続々と人が訪れます。そして18時30分、盆踊りがスタートしました。
踊りの開始を待ちわびていた踊り子や浴衣を着た紳士淑女はもちろんのこと、はじめは遠巻きにスマートフォンを向けるだけだった人も、緊張が和らいだのか、次第に輪の中に加わっていきます。「東横ハチ公」が駆けつけたことも手伝い、子どもたちも揚々と踊りに参加していました。
東横ハチ公と踊る「東横ハチ公音頭」や、ゲストアーティストによる生歌、パフォーマンスによって広場は大盛り上がり。大きなお面をかぶった明和電機や、ギャル電によるクラブさながらの盛り上げなど、トラディショナルな盆踊りとは一線を画すパフォーマンスには、特に大きな歓声とカメラが向けられていました。
やぐらの脇には、光る太鼓が設置されていました。太鼓とライトが連動し、面やフチなど叩く場所によってインタラクティブに色が変わる仕組みです。大人も子どもも、音楽のリズムに合わせてビートを刻みながら楽しんでいました。
おなじみの曲や、盆踊りでは珍しいアップテンポな洋楽に合わせて踊り続けていると、時間はあっという間に終了時刻に。終わりを惜しむ空気が広場を包みます。
するとなんと、イベント時間が延長に! ゲストアーティストがそれぞれもう一度パフォーマンスを披露する“おかわりタイム”が到来し、集まった人々は額に汗を浮かべながら笑顔で音楽に乗せて踊ります。
隣り合った人と顔を見合わせて笑ったり、ゲストと一緒に写真を撮ったり。設営資材の入った小さいポーチを携えたスタッフさえも、踊りの輪の一員に。思い残しをするまいと楽しんだ末、満足感を帯びたため息と拍手で大団円を迎えました。
本来は神社や公園で、地域伝承の踊りを行うのが盆踊りのスタンダードといっても過言ではないでしょう。だからこそ今回のBON CAST.は、さまざまな人を惹きつけ、多様な個性が調和する渋谷キャストの懐の深さを感じることができるイベントとなりました。