SHIBUYA CAST./渋谷キャスト

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JOURNAL

ジャーナル

EVENT
2026/02/03

いい生き方にいい本あり。上坂あゆ美×まほぴ×ポインティのぶっちゃけ生存戦略

いい生き方にいい本あり。上坂あゆ美×まほぴ×ポインティのぶっちゃけ生存戦略

奥渋にブックストアとコワーキングスペースを構える、本と編集の総合企業「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(通称:SPBS)」と、渋谷キャストの共同企画「WORK & BOOKS SHIBUYA」が、ついに始動!「いい本がそばにあると、いい仕事ができる」をコンセプトに、今後トークショーをはじめとするさまざまなイベントが開催される予定です。

 

2025年11月26日(水)に開催された記念すべき第1回目のゲストは、幅広い世代の読者から大きな注目を集める歌人・文筆家の上坂あゆ美さん。発売から1年を迎えた初のエッセイ集『地球と書いて〈ほし〉って読むな』(文藝春秋)を軸に、上坂さんと親交が深い歌人の岡本真帆さんと猥談系YouTuber/Podcasterの佐伯ポインティさんを迎えたトークショーが行われました。


日々の仕事や健康、人間関係、そして創作の喜びと痛み――。悩みの尽きないこの時代に、言葉を尽くして生きてきた3人は、あらゆる困難をどう生き延びてきたのか。“ぶっちゃけ×生存戦略”をキーワードに、ここでしか聞けない本音トークで語っていただいた当日の様子をダイジェストでお届けします。

 

<開催概要>

2025年11月26日(水)「上坂・まほぴ・ポインティに聞く!ぶっちゃけ生存戦略『地球と書いて〈ほし〉って読むな』重版記念イベント」

 

主催:渋谷キャスト

企画・運営:SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS

鮮やか、だけど暗い。「あのころの邦画のノリ」がある

 

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上坂さんと岡本さんは、実は第一歌集を出版したタイミングがほぼ同じ。岡本さんは『水上バス浅草行き』、上坂さんは『老人ホームで死ぬほどモテたい』で、2人とも2022年にデビューしました。佐伯ポインティさんが「気が合うんじゃないか」と2人を引き合わせてから、3人でも頻繁に遊ぶ仲だといいます。


そんな3人のトークイベントは、「ちきゅほし」の愛称で知られる『地球と書いて〈ほし〉って読むな』の感想を話し合うところからはじまりました。

 

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上坂あゆ美(以下、上坂):ぶっちゃけ「ちきゅほし」どうだった……? 2人の感想が聞きたい!


佐伯ポインティ(以下、ポインティ):

読んでいて好きだったのは、メイドカフェでバイトするくだり!あと「ピーピー泣くな、狩野英孝みたいになれ」っていうお母さんのセリフとか。


これは全体的に言えることなんだけど、もともと上坂の文章に感じてた“いい感じに思える邦画のノリ”みたいなものが、「ちきゅほし」にあったんだよね。中島哲也監督が手がけた青春コメディ『下妻物語』とかにあるような。

 

画像佐伯ポインティ(さえきぽいんてぃ)

マルチタレント。早稲田大学文化構想学部卒業後、株式会社コルクに漫画編集者として入社。2017年に独立し、猥談系YouTuberとして活動をスタート。2024年7月からは「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」をPodcastで配信中。

 

上坂:すごい!私、『下妻物語』大好きなんですよ。


ポインティ:中島監督といえば『嫌われ松子の一生』とか、彩度高めの映画の雰囲気もあるよね。絶望感もあるけど笑いもあるし、ギャグっぽいけど大事なことも言うよ、みたいな。個性的なキャラクターがいっぱい出てくるのも似てるし。


岡本真帆(以下、岡本):ポイちゃんが言ってること、なんかわかる。「ちきゅほし」って映画化できそうだよね。


上坂:誰かぜひ映画化してください。それに「彩度高め」って言ってもらえたのもうれしい。暗いことを書くときはポップさを足したくなるんだよね。

 

画像上坂 あゆ美(うえさか あゆみ) 

歌人・文筆家。2022年、短歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』(書肆侃侃房)でデビュー。その他の著書にエッセイ集『地球と書いて〈ほし〉って読むな』(文藝春秋)、共著『友達じゃないかもしれない』(中央公論新社)など。Podcast番組『私より先に丁寧に暮らすな』パーソナリティ。

 

岡本:。私の場合、短歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』を通してあゆ美ちゃんの過去とか家族のことを知ったんだけど。短歌には行間があって余白が多いでしょ、だから書いていない部分は想像で補っていて。その状態で「ちきゅほし」を読んだから、「あの短歌の余白にはこんなことがあったんだ!」って答え合わせができたというか、ちゃんと知れたんだよね。


上坂:そっか。まほぴは私の生い立ちを本で知ってくれたんだよね。……途中で「父親がフィリピンに飛んで〜」とかめちゃくちゃなこと書いてるけど、だいじょうぶだった? 


岡本:だいじょうぶ、あゆ美ちゃんの個性として受け止めてるから!。あゆ美ちゃんの文章って「ここに上坂あゆ美がいる」と感じさせる力があるんだよね。それって、偽ったり誤魔化したりすることがなく、自分のことをありのままに書いているからだと思う。


ちなみになんだけど、「フルーツに生まれ変わるなら何になりたいか」とか、「初対面の人に理想の死に方を聞くのはやめたほうがいいよ」って言ってるの、私なんですよ。まさかエッセイに登場するとは思ってなくて。こっ恥ずかしいけど書いてくれてうれしかったよ。

 

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岡本真帆(おかもと まほ)

歌人・作家。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』、2024年に第二歌集『あかるい花束』をいずれもナナロク社から刊行。 東京と高知の二拠点生活をしながら、会社員と文筆業を兼業中。

 

「共感ってされる?」それぞれの見られ方と生存戦略

 

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場もすっかりあたたまったところで、初エッセイの反響についてたずねられた上坂さん。この1年を振り返りながら、話題は「共感」というテーマを軸にそれぞれの見られ方、そして「生存戦略」の話へと移っていきます。


上坂:ふたりは『共感』されることってある? 「ちきゅほし」が出てからありがたいことにたくさん感想をいただいたけど、「すごくわかります!」みたいな感想ってないんだよね。私の言動や考え方に自分を重ねてる人ってあまりいないというか。


岡本:私はものの魅力について語るタイプだからか、共感されることは多いかも。短歌の作風について「共感をPOPに呼び起こす」と表現されることも。ポイちゃんはお悩み相談してるし、共感されることあるんじゃない?


ポインティ:お悩みの内容に共感する人は多いんだけど相談に乗ってるポインティ自体には、共感してる人はいなそうかな。昔、某スイーツビュッフェレストランとコラボをしたときにガチャガチャになったことがあったんだけど、そのキャプションに 「スイパラの店員に気づかれてない、つまみ食い妖精」みたいに書かれてて。それを見て「妖精っぽさを求められてるんだな」って思ったことはあるかな。


岡本:たしかに、ポインティは共感というより安心感があるよね。笑ってるとホッとするみたいな。


上坂:たしかに。本にも書いたけど、「それなりにいいやつであること」ってこの社会で生きるうえで大切だなって思って、私はそこに気づいて以来、「善人であること」を生存戦略としてる。


ちょうどいいからそのまま生存戦略の話がしたいんだけど、2人はこれ!っていう生存戦略持ってる?

 

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岡本:私はシンプルに「ちゃんと休む」かも。周りからよく「体力お化け」と言われるんだけど、実はそんなことはなくて。「これをするとこのくらい疲れるから、この辺りで休憩を取らないと」みたいなコントロールがうまいだけ。


上坂:何それ! しごできじゃん。回復方法も把握してるの?


岡本:今日は疲れるなってわかってたら、お風呂のお湯張りを予約して家を出るとか。


ポインティ:疲れる前に回復手段を用意してる! でもそれって、自分の体力が見えているからできることだよね。ダメージに気付きづらい側からすると、すごいと思う。

 

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本:たしかに、ポイちゃんこそ「体力お化け」だよね。でも自分の残りHPが見えづらいっていうこともあるのか。ポイちゃんの生存戦略は?


ポインティ:うーん、おもしろいものを摂取し続けることかな。

上坂:それは本とか映画とかってこと?


ポインティ:そうだね、本でも映画でも、お笑いでも音楽でもなんでもいいと思う。とにかく退屈する暇をなくすことを大事にしていて。退屈が一番苦手なんだよね。 たとえば映画を見ているときはずっとスクリーンに集中しているわけだから、そんな暇なくなっちゃうんだよね。


岡本:言われてみれば映画をたくさん見てるイメージがある……。あれこそが生存戦略だったんだ。

 

もしもフルーツに生まれ変わるなら?


『地球と書いて〈ほし〉って読むな』に出てくる話題をきっかけに、「フルーツに生まれ変わるなら?」と話しはじめた3人。たとえ話を考えていると、意外にも3人の性格と現状をフルーツが言い当てていることに気づきました。


上坂:まほぴの真似をして「フルーツに生まれ変わったら何になりたい?」いろんな人に聞くようになったんだけど、これって元々なんでフルーツの話になったんだっけ?


岡本:私は歌人として活動しながら、会社員としても働いてて。ある日、会社の同僚に「会議したくない」と言ったら「じゃあ楽しい話をしよう。生まれ変わったら何のフルーツになりたい?」って聞いてくれたの。それをあゆ美ちゃんに話したんだよ。


ポインティ: いい同僚だなあ。

 

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上坂:生まれ変わったら、まほぴは何のフルーツになりたい?


岡本:私はシャインマスカット。


ポインティ:そんなような色の服を着てるけども、まさか意識してる?


上坂:まほぴって黄緑好きだよね? もう現世でなろうとしてるな。


岡本:シャインマスカットって、「巨峰に比べて自分は……」とか思ってなさそう。そういう他者と比べないところが好き。もしいちごが人気でも、「いちごもいいよね」みたいな。


ポインティ:考えてたけど、フルーツに生まれ変わるならパッションフルーツかな〜。ジュースの中に入ってる南国のフルーツになりたい。


岡本:ねぇ、人のこと言えないよ! パッションフルーツみたいな色の服着てるじゃん。


ポインティ:うわ、本当だ。そういうアレなんだ! 深層心理的な?


上坂:もっとメジャーで主役っぽいのがいいのかと思ってたから、意外かも。


ポインティ:いや、ぜんぜん主役じゃなくていい。なんていうか、期待値が高い状態が好きじゃないんだよね。かわいい、お気楽、みたいな期待はされても受け止められるけど、「有能である」みたいな期待値をされると困っちゃう。「意外といいじゃん!」くらいを保っていたいのかも。


上坂さん:決まってんな〜、生き方が。もしかしたら生存戦略が決まってるタイプは「今のまんまがいい」って思ってるから、深層心理が表に出てきちゃうのかもしれないね。ちなみに私はスイカ。理由はだいたいのフルーツにフィジカルで勝てそうだから。

 

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岡本:あゆ美ちゃんはさ、なんで味とかかたちじゃなく強さなの? ぶつかる前提?(笑)


上坂:人間界で生きててもぶつかられるじゃん。それは殴り合いじゃなくても。せっかくなら負けたくないなと思った。


岡本:闘争心、燃やしてるな〜。


上坂:ちなみにスイカを選んだ友だちは何人かいて、そのうちの一人は「散り際が派手だから」。もう一人は「スイカを切って食べるときって、パーティ感があって、その場にいる全員が笑顔になるから」だって。


ポインティ:理由が最高すぎる! 同じ果物でもここまで違ってくるんだね。


上坂:さっきも言ったけど、今の自分と似たフルーツを選ぶ人もいるし、なりたい自分をイメージして選ぶ人もいるよね。

 

世界の見え方を変えた一冊

 

話題は独自の表現スタイルを築いてきた3人の創作の原点に。それぞれの“世界の見え方を変えた一冊”を紹介してもらうと、三者三様の作品が飛び出しました。

 

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『えーえんとくちから』笹井宏之(ちくま文庫)

 

岡本:短歌を書き始めるきっかけをくれた、私にとって大切な一冊です。笹井さんの作品に触れると、言葉の豊かさとは何かに気づかされます。平易な言葉を使っているはずなのに、そこには言葉以上の何かが宿っている。意味として『わかる』部分もあれば、説明はつかないけれど心に深く刺さる部分もある。

削ぎ落とされた短い言葉で、ここまで広い世界を描き出せるということに、いつも驚きと魅力を感じています。

 

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『賭博黙示録 カイジ 8巻』福本伸行(講談社)

 

ポインティ:作者の福本さんは漫画にインパクトを残すのが得意な人で、1巻なのに絵じゃなくて超でかい文字で話が終わったりするんですよ。でもそれが絶妙なバランスで成立してる。今回選んだ8巻は“鉄骨渡り”のところなんだけど、正直「最終回やん!」って思うくらい熱い話。全13巻のうち、メッセージング自体は8巻で完結していると思う。

 

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『厄介者のススメ ジョン・ウォーターズの贈る言葉』ジョン・ウォーターズ(フィルムアート社)

 

上坂さん:これは信頼する書店員の友人がおすすめしてくれた本。『ピンクフラミンゴ』や『ヘアスプレー』を手がけた監督、ジョン・ウォーターズがある卒業式で話したスピーチが本になったもの。「世界は変わるんです」と呼びかけながら、「悪趣味の帝王」と呼ばれたジョンが学生に向けて語る、まさに生存戦略の話です。「ユーモアは最大の防御であり武器です」とか「孤立を拒みましょう、分離主義は負け犬のやることです」とか、彼にしか語れない前向きさがある。

 

働きながら、ありたい自分であるための戦略

 

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終始、笑い声が聞こえてきた満席の会場。イベント終盤では、参加者からの質問に応える一幕も。


「最近幸せに感じたことってありますか?」


ポインティ:あります! 最近Apple TVを楽しんでいるんですけど、その中で配信されている『プルリブス』っていう作品が本当におもしろい。毎週、最高に楽しみです。


岡本:私は登山デビューしたことかなあ。登山靴を買いに行ったら店員さんがすごい褒めてくれて(笑)。それにしてもポイちゃんは本当に映画とかドラマが好きだね。


そのほかにも、上坂さんの創作に関わる質問もあがりました。


「ご自身のことを書くうえで、人に知られたくない話もあると思います。書くか書かないか、迷うことはありますか?」。


上坂:そういう迷いはないですね。本を出すってなったときに、自分が書けるなかでいちばんおもしろいことを書きたい。そうなったとき、自分の人生以上におもしろい話ってないなと思ったんですよね。


まあ私自身に抵抗はなくても、それを許容してくれる私の家族の方がすごいですよね。

「ちきゅほし」について、ある書店員さんに『ヤニまみれのさくらももこ』って言われたこともありました。

 

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最後に、本企画を担当されたSPBSの佐和千晶さんにお話を伺いました。


「『渋谷キャストで働く人やクリエイターがターゲット』と伺って、そうした皆さまの働き方やクリエイティブのヒントになるような企画を考えました。今回お呼びした3名のゲストは、会社で働いた経験を経てクリエイティブで独立された方や、現在も会社員と作家の両輪で活躍する方々です。そうした背景も含め、幅広い立場の方にとって参考になるお話が聞けるのではないかと思いました。

また、メインで取り上げた『地球と書いて〈ほし〉って読むな』は、発売から1年が経ってもさらに重版し続けている本です。本が売れ続けることが難しい時代だからこそ、新刊を紹介するだけじゃなく、1年2年と長い時間をかけて読み継がれる本を紹介していくことも必要なことだと思うんです」

 

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友だち同士の会話をこっそり聞いているようだった2時間のトークイベント。「ちきゅほし」の感想や生存戦略を聞く上坂さんに、さまざまな話題に乗りつつ冗談を言い合う岡本さんとポインティさん。いつも通りの雑談にも見えるトークショーの中には創作を続けながらも楽しく生きるための戦略がたくさん散りばめられていました。会場にいた上坂さんのPodcast番組『私より先に丁寧に暮らすな』のリスナーさんも「いつも通りぜんぜん飾らない上坂さんで、まるで公開収録を見ているようでした」と、笑いながらサイン本を見せてくれました。

 

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ファン一人ひとりとお話しながらサインをする上坂さん

 

それぞれが語った戦略と生き方は、クリエイティブな仕事だけでなく、ありたい自分として暮らしていくうえでも参考になるものばかり。一見すれば「才能があって、戦い方を見つけたすごい人たち」と思われてしまいがちな3人のゲストですが、その“戦い方”を見つけるまでに紆余曲折があった、ということを実感します。


「自分なりの生存戦略を見つけて、ちょっとだけ楽になった」

「フルーツならスイカがいい、フィジカルで勝てるから」


ユニークでクスッとできる語り口、けれども力強く心に届く上坂さんの言葉は、きっと半生にぎゅっと詰まった不思議な経験に由来している。三者三様、それぞれが創作と生活を両立させてきた生存戦略から、明日を生き抜くためのヒントを分けてもらえた気がします。


次回の「WORK & BOOKS SHIBUYA」は2026年2月8日(日)を予定しています! 本をテーマに、これからさらなるアップデートを重ねていきますので、どうぞお楽しみに。

 

CREDIT

執筆:乾隼人

撮影:Re!na、須藤翔(Camp Inc.)

編集:横田大、須藤翔、Re!na(Camp Inc.)

デザイン:山下舞、植木駿(Camp Inc.)