2020.8.6

<EVENT REPORT>
コロナ禍で変容する都市のこれからとは?
クリエイティブ思考で未来の都市を考える『202X URBAN VISIONARY vol.4』

2020年6月18日、クリエイティブ思考で都市の未来を考えるトークセッションシリーズ「202X URBAN VISIONARY vol.4」が開催されました。
本来であれば、渋谷キャストの開業3周年祭に合わせて渋谷キャスト内のスペースで開催する予定だった本企画ですが、新型コロナウイルスの影響を受け、渋谷キャスト主催の企画としては初となるオンライン形式で実現されることに。 結果的に1000人を超える方々から参加申し込みをいただき、オンラインイベントの可能性を感じる貴重な機会となりました。

今回登壇したメンバーは次の通りです。東京の都市開発に第一線で関わるプレーヤーたちが、コロナ禍による「都市の変容」をテーマに繰り広げた熱いディスカッションの模様をお届けします。
動画はこちら

・齋藤 精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)
・豊田 啓介氏(noiz 共同主宰/gluon 共同主宰)
・山本 恵久氏(日経クロステック・日経アーキテクチュア編集委員)
・田中 陽明(春蒔プロジェクト株式会社 代表取締役/co-lab企画運営代表)
・杉山 央 (森ビル株式会社 タウンマネジメント事業室 新領域企画部 課長)
・重松 眞理子 (三菱地所株式会社 都市計画企画部 ユニットリーダー)
・佐々木 誠 (三井不動産株式会社 S&E総合研究所 研究・コンサルティンググループ主任研究員)
・山口 堪太郎(東急株式会社 経営企画室 経営政策グループ 課長)


モデレーターの齋藤精一氏の呼びかけで2019年からスタートした本企画。
昨今の空前の再開発ラッシュにおいて、先導的なマスタープラン不足の現状についての課題の投げ込みがなされた初回の議論から4回目を迎え、齋藤氏はまた新たな展開を期待します。
「新型コロナウイルスによって、ライフスタイルが色々と変わっていくと思います。これまでのURBAN VISIONARYで僕は「こんなに再開発を進めて良いのか」という投げ込みばかりしてきましたが、 この状況を経て東京という場所をどのように活用し、日本の中でどのように位置付けるべきなのかという方向性にマインドが変化しました。色々な視点で皆さんのお話を伺いたいです」


caption:登壇者より、事前に投げ込まれた12のトピック




TOPIC:パブリックスペース
パネルトークのトップバッターを務めた佐々木 誠氏(三井不動産株式会社 S&E総合研究所 研究・コンサルティンググループ主任研究員)は、 「パブリックスペース」を切り口に語りました。コロナ下では、行き場を失った人々が広場や公園に殺到するなど、議論になることも多かったトピックですが、 佐々木氏はイノベーションが起きている各国の事例を紹介しながら、これからのパブリックスペースにおけるコミュニティの重要性について提起しました。
「今までのパブリックスペースは、人がたくさんくることが良いことだという前提で作られていましたが、コロナによって、 ”むやみに人を集めるものでもない”という方向性も考えていくべきなのではないかと思います。 ニューヨークの有名なブライアントパークでは、人をたくさん集めるようなイベントをやっている時もありますが、 小規模イベントもたくさんやっていて、数でいうと年間2000にもなる。アフターコロナでもお客さんが適度にくるコミュニティ重視の場が必要とされるのではないでしょうか」


TOPIC:密集と開疎化
続いては重松 眞理子氏(三菱地所株式会社 都市計画企画部 ユニットリーダー)による「密集と開疎化」にまつわるトーク。ある集まりにおける関係性の濃度という意味で「関係密度」という独自のキーワードを挙げました。
「濃度の高い関係性は、物理的な距離が生まれてしまうとどうしてもその関係密度が薄まってしまうのではないでしょうか。関係密度を深めるための距離感は、都心における重要な要素」とし、関係密度を薄めることなく都市で距離を取るにはどうするべきなのか、 新たに「都心の開疎化」というキーワードを挙げながら語ります。
「テラスや屋上を開放する。さらには純粋に扉を開けて、店が路面に出てくるということだけでも人々を惹きつけるものになっていくはず。 重要なのは、場を見て、そこを開疎化していく主体がいるのかどうかです。都心ではエリアマネジメントの活動が盛んなので、一体となって推進していけると思います」



杉山 央氏(森ビル株式会社 タウンマネジメント事業室 新領域企画部 課長)は、森ビルが現在大規模な開発を行なっているエリア「虎ノ門麻布台」について触れつつ、コメントしました。
「この街は、最初から広場を中心に街を作り、その間にビルを建てようという考え方で設計しました。都心における人と人との新しい距離の取り方は、ハードを作る側も考えていかなければいけないと思います」


TOPIC:デジタルツイン スマートシティ
ここで豊田氏が、今後オフィスが解約される流れは避けられないことに対して、「床の価値を多重化すれば良い」としつつ、問いを投げかけます。
「オフィスだけだった空間を、住居にも学校にも使えるようにして、3分の1の価値になるものを3枚重ねて1にする。そうした価値の移動ができるものを本格的に導入しないと、 コロナで顕在化した色々な問題は、解決できないと思っています。その意味で、解決策は複合的にスマートシティ的なシステムを作ることに繋がるのではないかと。そのあたり、皆さんどういったことを考えているのか伺いたいです」


これに対して山口 堪太郎氏(東急株式会社 経営企画室 経営政策グループ 課長)は、答えます。
「デジタルを後から足してやっていこうとすると、デベロッパーではバリューチェーンのかなり後ろの方になってしまい、採算性との兼ね合いもあって思うようなことができません。 本当は、街を作るときの根幹からデジタルを埋め込まなくてはならないのですが、今ある街でそれをやろうとするなら、開発に関わってきたデベロッパーが、デジタルのテクノロジーを持っている人と一緒にやっていかなければいけないですね」


齋藤氏も、「僕が関わっている開発でも、いうほどDXは進んでいません。もう時すでに遅しなんじゃないかと、ドキッとしますね」と発言。
豊田氏もマクロかつグローバルな視点で考えることの重要さを強調します。
「Google子会社の「Sidewalk Labs」がトロントから撤退したり、中国では次の仕込みがどんどん水面に出てきていたりしますが、あの仕込みは数年前からずっとやっているものなので、もっと切迫感持って見ないといけないと思います。日本で同じようなことをやるなら、今動き出さないと、数年後に実行されることはないですよ」


両氏はさらに、スマートシティという言葉自体がどこかで目的化してしまっていると語ります。
「何を目的として、何を価値にするのか考えないまま来てしまっている。『スーパーシティ法案』も、みんな『やらなくちゃいけないから』と応募していますが、 医療でもエネルギーでもいい、何か1つ切り口を作らないと何もできずに終わってしまいます」

一方で、大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアのスマートシティ化に取り組む重松氏は、スマートシティは特殊なものではなく、街そのものであると語ります。
「ビジョンがあって、それをどうテクノロジーでアップデートするのか、テクノロジーを通してどうリデザインするのか。その2軸で街のアップデートに取り組もうと、それを3~5年でやろうというのが私たちの考えです」
また、『あつまれどうぶつの森』ブームについても触れ、「未だかつてないくらい、『コミュニティ』とか『街』への注目が集まっています。それがリアルの街に接続されて、街に参加する人が増えるチャンスなのでは」とも述べました。


TOPIC:国際競争 都市の評価指標
トークは後半戦に突入し、テーマは「国際競争 都市の評価指標」へ。杉山氏は、森記念財団が毎年発表している「世界の都市総合力ランキング」(Global Power City Index, GPCI)の指標をもとに次のように述べました。
「東京はロンドン、ニューヨークに次ぐ3位の都市ですが、『文化交流』という項目が圧倒的に弱い。森ビルでは都市が人々を魅了し、惹きつける力のことを『都市の磁力』と呼びますが、東京は文化交流に注力することで磁力を高められるはずです」


その事例として、2018年に森ビルとチームラボがコラボレーションして作った「デザインアートミュージアム」を挙げながら、これからの東京には「本場」が必要になると強調します。
「今インバウンドは非常に厳しい状況ですが、また自由に行き来ができるようになった時に、『目的性』や『デスティネーション(旅行目的地)』が重要になる。私たちがこの施設を作ろうと考えた時、東京は何かの本場にならなきゃいけないという思いがありました。
だからこそ、『身体を使ってデジタルの空間を彷徨う』というテーマを掲げ、ここに来ないと得られない体験を作り出すことに力を入れました。結果的に230万人が1年間で来館し、そのうち半分が海外からのお客様、かつその半分がこの施設のために海外から東京に来てくれたといいます。世界を惹きつける『磁力』が生まれたんじゃないかと思います」


これに対し豊田氏から、「今、身体の移動を伴わないタイプの移動や新しいチャンネルが確実に増えていて、ここに土地を持っている人が関与するという新しい問題もあると思うのですが、どのように捉えていますか?」と質問を投げかけられ、杉山氏はこう回答しました。
「人が集まるところを広い意味で都市と考えるなら、リアルな空間もオンラインの空間も都市だと思います。バーチャルな空間のエリアマネジメントって何だろうとか、バーチャルなイベントで人が集まるような憩いの場をつくるってどんなことだろうとか、デベロッパーがやってきたことをひょっとしたら活かせるかもしれません」


TOPIC:エンタメと文化資本
そのままトピックは「エンタメと文化資本」に。重松氏は、コロナの影響でオンラインの可能性はよく分かったものの、五感を使いこなす機会がいま都会では奪われていると語ります。 そうした機会を取り戻すには、「外に近しい場所で色々なことをできるようにする」ことが重要としながら、そこには「音」の問題があると述べました。
「音に対する許容力を社会全体で高める必要があると思います。高架下でもいいですが、音が問題なく許容される状況になれば、五感がどんどん刺激されるような展開が生まれていくと思います」


TOPIC:バイオフィリック 都心と自然
田中氏は、外出が難しい状況が続いたコロナ下では、多くの人が自然環境を求めるようになったと前置きした上で、これからは「市中の山居」を求められると語りました。
「一時的に都心を離れ、郊外や田舎に出るスタイルもあると思いますが、やはり都心の利便性や効率性、文化を享受しながら、より自然を感じながら働いて暮らしたいという人もいる。 「市中の山居」をビル単位でもいいですし、街、区単位とか、都市全体として作っていく動きが活発になるのではないでしょうか」


TOPIC:行政・民間・PPP 規制緩和
続くテーマは「行政・民間 PPP 規制緩和」です。東京都のみならず全国的に「用途地域(計画的な市街地形成のため、用途に応じて13の地域に分けられたエリアのこと)」を見直すべきではないか、と問題提起する齋藤氏。
佐々木氏からも、興味深い意見が挙がります。
「時代とともに必要とされることや、人が変わってくると考えると、状況に応じて変えられるようにしたほうが良いでしょう。ニューヨークのマディソン・アベニューというエリアは超高級マンションが立ち並んでいますが、上から見ると全部屋上緑化していて、そこには何かしら決められたコードがあるはずなんです。
日本も例えば「屋上緑化したら何か規制を緩めます」という姿勢を打ち出せると、東京の街が一気に森になるということも可能になりますよね」


TOPIC:街の設計思想 エリアマネジメント
ほぼノンストップで進行してきたパネルトークも、ラストのテーマ「働き方とワークスペース」に。co-labを展開し、働き方の改革に長年携わってきた田中氏は、 「ワークスペースの変化は注目すべきだと思います。換気窓の必要性や、疎にならないオフィス空間のあり方、本社機能を縮小・分散化する「オフィスの分散化」の流れも大きな議論になるはずです」と語りました。



登壇メンバーたちの間にはまだまだ議論し足りない…という雰囲気が漂いますが、時刻は終了予定の21時を過ぎ、名残惜しさを噛み締めながらもクロージングへ。それぞれが当日の感想を述べていきました。
豊田氏や齋藤氏は「とにかく様々なスケールのものを取り混ぜ、各社としても連合としても今アクションをしなくてはいけない」と強調。さらに、山本氏も「2年前にURBAN VISIONARYを始めた時の危機感とはまた異なる危機感が生まれている」とし、 エリア間・デベロッパー間の連携を今こそ具体的に立ち上げるべきだとしました。


2時間という短い時間では語りつくせないほどの重要なトピックが提起されましたが、「変えるなら今しかない」という危機感が共有され、「今こそ各所が連携して都市を作っていくチャンス」というこれまでにない一体感が醸成された刺激的なひと時となりました。
クロージングで指摘があったように、この会をきっかけとして企業間・エリア間の連携が動き出し、具体的なプロジェクトが立ち上がっていくことを期待します。