2020.3.30

<EVENT REPORT>
デンマークから来日。デザイナーによるデザイナーのためのカンファレンス『Design Matters Pop up in Tokyo』

新しい年を迎えて間もない1月末の渋谷キャストは、いつもと違う北欧な雰囲気に。
デンマークはコペンハーゲン発のデザインカンファレンス「Design Matters」が日本にてはじめて開催されました。

「デザイナーによるデザイナーのための」カンファレスということで、世界中からデザイナーが集結。デザインの動向をシェアしたり、インスピレーションを与え合ったりと、 ディープかつエキサイティングなひと時となりました。

「Design Matters」は2015年にデンマークで始まり、昨年9月には世界中から1,000人もの参加が殺到し、世界的なデザインカンファレンスへと発展。 今回ははじめて本国から飛び出しての開催ということで、Design Mattersにとっても新しい挑戦になります。

渋谷の真ん中でデンマークのデザインに触れるという、刺激に満ち溢れたイベントについて、開催前日から当日の様子までレポートします。



イベント前日、カンファレンスの準備もそこそこに、運営チームは渋谷キャストのご近所にある渋谷教育学園渋谷中学高等学校へと向かいます。 この日は、渋谷教育学園の生徒の方々とディスカッションデイ。デザインやアートに関心のある中学・高校生が集まり、世界で活躍するDesign Mattersのメンバーに質問が殺到しました。



実際に制作活動に励んでいる生徒も多く、ゲーム、音楽、漫画、小説など分野もさまざま。 専門的な話も飛び出し、かなり本格的に取り組んでいる様子にDesign Mattersメンバーから「Cool!」と声がこぼれる場面も。

「クライアントワークでどのようにオリジナリティを出しているか」「デザイナーになるためには何をすれば良いか」など本質をついた質問には、 答える側も改めて考えさせられることもあったよう。国や年齢の違いはあれど、お互いに何かを生み出すことにひたむきに取り組んでいるからこそ通ずる部分が多く感じられました。 渋谷の中心に位置する学校に通い、日々あらゆることを肌で感じている学生の皆さんも、デンマーク視点の話は新鮮だったようで、時間を延長してもなお質問が続きました。



名残惜しく学校を後にすると、続いてカンファレンス前夜祭となる国際交流イベント「UX JAM x Design Matters」へ。 UXデザイン専門WEBメディア「UX MILK」が主催となり、UXデザインのライトニングトークをしながら交流する「UX JAM」をベースに、日本語禁止、英語オンリーで進行します。
交流スタート前、「Do not be shy. Fuck Grammar. Use body language. Show your passion!」を投げかけられると、そわそわしていた日本人参加者も鼓舞されたように、交流も積極的に。 デザインという共有言語のもと、会話も自然と盛り上がっていきます。


そんなたのしい時間もあっという間。多幸感に満ちた熱量は一旦会場にしまい込んで、翌日のカンファレンス本番へ続きます。



カンファレンスのメインとなる1月29、30日は、10時から18時までボリュームのあるプログラムに。ここからは2日間の様子をほんの少しだけお伝えします。


オープニングには、Design Matters創業者の一人、Ingrid Haugさんが登壇。北欧におけるデザインの動向や哲学を語りながら、Design Mattersの狙いを話します。
Design Mattersは、デザイナーの今と未来に向けて、デザイナー同士がインスピレーションを与え合い、新しい動向をシェアし合う場所です。 実際にプログラムには、世界各国のデザイナーによるトークだけでなく、ワークショップや交流会など、インプットからアウトプットまでふんだんに盛り込まれた内容になっています。

これもひとえに、デザイナーの役割やデザインのプロセスが変わってきている背景があるといいます。遡ると、かつての創作活動というものは、一人キャンバスに向かって絵を描いたように孤独でストイックなものでしたが、 いまやツールや環境もオープンになってきており、共同で創作する時代。それと同時に、デザイナーに求められることも多岐にわたっており、デザインにおいて考えるべきこと、取り組むべきことは日々広がっています。

そこでこのカンファレンスで掲げるテーマは「デザイナーの新たな役割、クリエイティブの威力、北欧のデザイン哲学」の3つ。 デザイナーはユーザーだけでなく、社会に対して何をつくり出すべきなのか。それはクリエイティブの力でどのように届けることができるのか。 そうした壮大な課題を考えながら、北欧らしい遊び心のあるカジュアルなアプローチから、解決の糸口を探っていく場となります。

会場には、デザイナーと一口に言っても、デジタル、プロダクト、グラフィックなどあらゆる分野で活動する方が集まっており、 それぞれにデザインの新たな可能性を探ろうと前のめりの様子でした。



続くゲストプレゼンテーションでは、世界各国からSlack、Figma、Dropboxなどデジタルデザインの大手企業で活躍するクリエイターが登壇。 自身のデザインとの出会いや実際の現場でのエピソードを交えたデザイン動向などプレゼンテーションされました。 トークはもちろん、スライド資料もウィットに富んでおり、デザイナーらしい気配りが垣間見えます。


プログラムの中では、ワークショップも実施。コペンハーゲンで取り組まれているプロトタイプの作成プロセスを実践します。


この日のお題は「子供向けスピーカーのプロダクトデザイン」。
「組み立て、テスト、観察、調整」といったプロセスを、スピーディーに行なっていきます。時間をかけがちな制作初期にある膨大なリサーチとアイデア出しを迅速に行い、 ユーザーとのコミュニケーションのテスト・観察に重きを置くことで、できるだけ早く本質的な課題に気づけるようにする狙いです。


「デザインは常に人を扱うもの」として、見た目の美しさやアイデアとしての面白さだけでなく、デザインに人が触れたときにどうあるべきか。 最終的に行き着く人とのコミュニケーション上の設計が肝要になってくるのです。


ワークショップでも、リサーチからプロトタイプ作成はたった30分。炊飯器をセットしてご飯が炊ける前に、一つの商品ができているレベルの速さです。 参加者の皆さんはほどよい緊張感に包まれつつ、自らのスキルの見せ所と言うように生き生きと取り組んでいました。


終始刺激と遊び心にあふれた空間でしたが、そうした空気はDesign Mattersのメンバーや登壇ゲストが、 とても気さくに関心を持って参加者とコミュニケーション取られていることが大きいように感じました。


実際に日本のデザイン文化に興味があったと、Design Matters創設メンバーのMichael Christiansenさんは話してくださいました。
「日本の工芸に見られるようなシンプルで職人的なデザインは、海外の現場においても学ぶべきことがあります。今回は北欧を中心としたナレッジシェアがメインでしたが、 日本のデザインに関心があるし、日本人にとっても自国のデザインについてこうした場で一歩引いて見ることで新しい発見があると思います」


確かに、普段触れているものでも、文化圏の異なる相手に説明しようとすることで新たな視点や気づきが生まれるといったことは、デザインに限らずあることです。 Design Mattersはまさにそういった体験を与えてくれるもので、デザインについて話し、共有するということをとことん突き詰めることで、 デザインの世界をぐっと広げていくパワーを感じました。


渋谷キャストは日頃から多くのクリエイターが行き交う場所ですが、ここまでデザインにディープに向き合う2日間はおそらくはじめて。 デンマーク仕込みのクールで遊び心にあふれたHyggeな空気が漂いつつも、すさまじい熱量を感じる渋谷キャストでした。