SHIBUYA CAST./渋谷キャスト

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2023/06/13

<EVENT REPORT>
“不揃いなものが響き合うよろこび”
渋谷キャスト開業6周年を祝う「周年祭」開催レポート!  

<EVENT REPORT> “不揃いなものが響き合うよろこび” 渋谷キャスト開業6周年を祝う「周年祭」開催レポート!

4月29日、30日に開催された渋谷キャストの6周年祭、開業当初の建築デザインコンセプトであった「不揃いの調和」を今年は周年祭のコンセプトにも掲げ、さまざまなクリエーション領域を横断した、2日間限りの薬膳茶室、屋外編集室、ブティックが登場しました。「不揃いなものが混ざり合い、響き合うことのよろこびを感じてほしい」。そんな渋谷キャストの願い通り、多様な人や考え方、表現が一つのテーブルに集い、たくさんの出会いと笑顔、そして新たな気づきや発見が生まれた2日間となりました。ここではその様子をお届けします。

 

PHOTOGRAPHS BY
Koji TADA(YUKAI)
BAUM
TEXT BY
Kana YOKOTA (BAUM)

 

▶︎SHIBUYA CAST. 6周年祭
Produce::熊井晃史
Operation:シアターワークショップ
Creative Direction:BAUM LTD.

 

<PUBLIC TABLE>
Produce/Planning::株式会社グランドレベル(田中元子+大西正紀)
Design:長岡勉(POINT)

 

<良薬口愉(りょうやくこうゆ)茶室>
Creator:ヤマグチヒロ

 

<13Fポップアップ編集室>
Creator:緒方修一、伊勢華子(13F/OLDNEWS)

 

<ニューブティック new boutique>
Creator:GAKU、apartment

「PUBLIC TABLE」で自分だけの旗をつくって立ててみる

 

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渋谷キャストを訪れると最初に現れるのは、グランドレベル制作の10メートルほどある巨大なテーブル。ここは「みんなの旗をつくって立ててみよう!」というワークショップをはじめ、「ニューブティック new boutique」参加デザイナーによるワークショップや食事を楽しむ人、休憩する人など、2日間さまざまな人が集う、憩いの場となりました。

 

旗づくりは、用意されている大きな布を好きなサイズに切り取り、マジックなどでデコレーションして自分だけの旗をつくるというもの。「自分でつくった旗を、自分の好きな場所に立てよう!」。そこには、誰もが一国一城の主であるということを自覚し、一人でも国家を宣言できる社会になってほしい、そんな願いが込められています。

 

旗をつくる経験は初めての子どもたち、とても嬉しそうにたくさんつくり、広場のあちらこちらにおいて写真をとってみたり、手に持って行進してみたり。そこに込められた想いは知らずとも、「旗を立てる行為」に意味があること、旗を持つと自ずと意志が生まれることを感じとっていたのかもしれません。

 

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自分だけの旗をつくった人たち。大人も子どももみんなイキイキとした笑顔になる。

 

 

 

茶室で薬膳ドリンクを飲みながら、身体の声を聴く

 

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薬膳料理研究家のヤマグチヒロさんによる「良薬口愉(りょうやくこうゆ)茶室」は、「良薬口に愉しい」をテーマに、お茶室の体験を楽しめるというもの。といっても中身はお抹茶ではなく、体調やその日の気分に合わせて効能別に選ぶ野菜の薬膳ドリンクです。

 

ドリンクの種類は3種類。

 

・「造血のいっぷく」
ビーツ、ニンジン、赤ピーマン、棗入り。食べ物で血をつくり、貧血対策におすすめ。

 

・「美肌のいっぷく」
小松菜、モロヘイヤ、フェンネル、生姜が入り。身体の要らないものをデトックスして内側から美しく。

 

・「補益・温活のいっぷく」
カボチャ、タマネギ、ゴボウ、シナモン入り。エネルギーを補給して身体を温める効果あり。

 

一杯300円の薬膳ドリンクを購入したらスタッフの方が茶室へと案内してくれます。木と畳のみで制作された茶室は空間デザイナーであるPOINTの長岡勉さんが手掛けられています。3畳の小さな空間へ足を踏み入れると、まるでそこだけが外界から切り離されたかのような感覚を覚えます。長岡さん曰く「僕が結界を張っておいたので静かに、ゆっくり自分と向き合ってください」とのこと。

 

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BAUMスタッフもヤマグチさんのお手前でビーツの鮮やかな赤いドリンクをいただきます。春の清々しい陽気の中、ガーデンに突如現れた茶室で、自分の身体の声に耳を傾ける時間はとても心地よく、ふだんこういった時間をいかにとっていなかったかということに気づきます。

 

茶室では、初めましての方でも同じ空間にいることで自然と会話が生まれ、親近感が湧くから不思議です。終日、さまざまな方が茶室でゆったりとお茶を飲みながら、和気藹々と談笑している姿が見られました。

 

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氷を浮かべた「美肌のいっぷく」のグリーンも美しい。

 

 

 

みんなの日常に起こる“小さな事件”を紡ぐ部屋

 

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続いて大階段前では、渋谷を拠点に世界の都市をつなぐ新聞『13F/OLDNEWS』ポップアップ編集室が登場。事前に募集された「あなたの〈ちいさな事件〉」が大階段の壁際に映像として投影されました。当日も参加できるように用意されたカラフルなリボンには、思わず笑ってしまいそうな本当に小さな事件や、心配になるほどの大事件が書かれていて、足を止めて見入ってしまいます。

 

ここで集まった小さな事件は『13F/OLDNEWS』でも一部掲載される予定とのことですが、少しご紹介します。

 


「タケノコアレルギーだったことが発覚しました」

 

「うしかのどうぶつは はしるのがはやい」

 

「遊んでて骨を折ってしまった!大事件!」

 

「母の大切な器を割ってしまった」

 

「明日は雨!」

 


他にも入手困難なバックナンバーの展示や編集長の手掛ける「緒方修一装丁室」本などの販売も。緒方さんや伊勢さんご本人も終日編集室に立たれ、お二人とのお話を楽しみに参加してくださるお客様もたくさんいたようです。

 

ちなみに『13F/OLDNEWS』は世界の生活者が記者となって〈私的エポックメイキング〉を伝える新聞。創刊から3年、非編集を一貫してつくられています。
発行人の伊勢華子さんの記事はこちら。

 

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『13F/OLDNEWS』企画で、29日(土)にはシンガーソングライター・小島ケイタニーラブさんのアコースティックライブと写真家・朝岡英輔さんのプロジェクションのコラボレーションパフォーマンスも行われました。小島ケイタニーラブさんの切なくもあたたかい音楽が大階段中に響き渡り、春の週末の昼下がり、渋谷キャストが幸福感で満たされました。

 

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さらに、29日の夜には<Talk Session 装丁家鼎談「本chaばなし>も開催されました。登壇者は原条玲子さん(装丁家)+ 坂川朱音さん(装丁家)+ 緒方修一さん(装丁家・13F編集長)。本という違う顔をつくり続ける装丁家3人によるトークイベントで、ふだんはなかなか聞くことのできない装丁の仕事のお話を、ふだん関係者以外は入ることができない「渋谷キャストアパートメント/13F BOOK GALLERY」で開催するという貴重な機会となりました。

 

 

 

装ってみたい。創ってみたい。自分の気持ちとであう合同展示会

 

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そして、屋内の「スペース」では、クリエーションの学び舎「GAKU」及びファッションマガジン『Apartment』と連携し、8ブランド合同展示会「ニューブティック」を開催!参加デザイナーは、下記8組のみなさんです。


・BIOTOPE
田中優大と田中杏奈によるユニット 。アートディレクション・グラフィック・ファッションの分野で活動。

 

・ROUND HAPPY
山梨県富士吉田からクリエーションの循環を生み出す「ROUND HAPPY」 はファッションを通しクリエイター、生産者、リテーラー、プロダクトを手にする方々とともにカルチャーの創造とより良い社会の発展を目指す。

 

・Nihey
working dress that iterates on aging

 

・Asahi Sato
1999年生まれ。専門学校で靴作りを学び、卒業後GAKUでファッションを学ぶ。現在は専門学校で授業のアシスタントを行うかたわらファッションショーの制作やコラボレーション活動をしている。

 

・Five year old
東京造形大学にてテキスタイルを学び、2021年東京造形大学大学院卒業後にFive year oldをスタート。オリジナルプリントや手染め、刺繍などを施しユニークなバランスを探りながら洋服を制作。

 

・Car Foranimal
2021年に成立したニットブランド。作品の一点一点がデザイナーの手で作られ、数多くの一点ものはすべてデザイナーからのメッセージとして誕生した作品。

 

・Christopher Loden
仕立て屋

 

・Felix Idle
フィリックス・アイドルはシドニーに生まれ、東京を拠点にリメイク、絵画、映像、立体作品、イベントやミックスシリーズのキューレーション、翻訳、(Wa?ste名義で)作曲などの分野を跨って活動している。

 


色とりどりのニットアイテムやユニークなデザインの洋服、ヘッドピースやレザーシューズなど、若手ならではの自由で大胆な発想から生まれたアイテムがずらりと並び、ワクワクしながら見る事ができる展示会でした。

 

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Car Foranimalのヴィヴィさんによるニットでつくられた帽子。一つひとつ手編みで、だいたい一つにつき一日をかけてつくられるのだとか。「早いものだと4時間くらいでつくることもありますが、自分で買いたいと思わないもの、気に入ったものができなければ最初からやり直します」。

 

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こちらのカラフルなダウン素材のアイテムは、BIOTOPEによるもの。Wearable Toy(装うことのできるおもちゃ)をコンセプトに、リサイクルダウンを使用しつつ、レゴブロックのようにスナップボタンでアイテムを自由に付け外しのできる、着るという行為が遊びのような楽しさを持つウェアをつくられています。

 

先日、ヨーロッパ最大のファッションコンペティション「ITS(International Talent Support)Contest 2022」でファッション、アートワーク両部門にダブルノミネートされ、みごとアートワーク部門のグランプリに輝いたそうです!おめでとうございます!

 

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今回の周年祭の空間デザインを担当したグランドレベルの田中元子さんが周年祭用のキービジュアル撮影で着用!とってもお似合いです。

 

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「リサイクルのものでリメイクできる素材ができないかと考えて発想しました。軍手をつかったシューズなどをつくっています」とはAsahi Satoさん。まだプロトタイプの段階だそうですが、今後Asahi Satoさんの作品が手に入るようになるのが楽しみですね。

 

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そして、彼らの作品を自由に身につけて、プロのカメラマンが撮影してくれるという楽しいブースも。カメラマンは岩渕一輝さん。デザイナーさんも親御さんも一緒になってスタイリングし、子どもたちも次第にテンションが高まります。

 

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大人だってノリノリでファッションを全身で楽しみます。

 

仕上がった写真はこんな感じです。

 

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チェック柄のハンカチに、Five year oldによるモチーフを組み合わせて自由にプリントができるワークショップ「check hanky by Five year old」も大盛況! みなさん真剣な表情で自分だけのオリジナルハンカチを制作されていました。

 

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どのコンテンツもじっくり、それぞれのクリエイターの想いを聞きながら楽しんでいると時間はあっという間に過ぎ去ります。30日はあいにくの雨でしたが、茶室は大階段前に移動するなどして無事に開催する事ができました。スペースでのワークショップも若い学生の方が多数参加し、クリエイティブな雰囲気が漂っていました。

 

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ランチは4月27日にリニューアルオープンしたばかりの「CITYSHOP NOODLE(シティショップ ヌードル)」へ。風が心地よいテラス席でいただく中華麺焼きそばとボリュームたっぷりのデリ&サラダが毎日通いたくなるおいしさでした。(ちなみにテイクアウトメニューで一番人気なのはサラダうどんだったそうです!)

 

そして、お口直しのデザートは「Marked」で。美岳小屋さんの自然栽培「きぼうのいちご」を使用したシーズナルアイスも絶品!

 

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渋谷キャストは、“クリエイティブ活動の拠点となる施設”というコンセプトのもと、年間を通してさまざまな実験的な取り組みを行っています。周年祭はその集大成的な位置付けとして、開業以来毎年開催してきました(コロナ禍の2020年を除く)。

 

「不揃いの調和」というコンセプトで開催された今回、異なる表現方法や思想を持ったクリエイターたちが一同に会し、PUBLIC TABLEで緩やかにつながった時に生まれたのは心地よいハーモニー。渋谷の街で、美しい音楽のようにお互いのクリエイティビティが響き合い、調和したとき、そこからまた新たな出会いや気づきが生まれる。

 

渋谷キャストの誕生を祝うにふさわしい一番のギフトは、“不揃いなものが響き合う”ことなのだと、改めて実感した2日間でした。