SHIBUYA CAST./渋谷キャスト

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2021/06/23

<EVENT REPORT>
ディスタンスを遊び倒し、東京のあるべき姿を語り合う。
渋谷で新しい視点と出会う2日間『SHIBUYA CAST.4周年祭』  

<EVENT REPORT> ディスタンスを遊び倒し、東京のあるべき姿を語り合う。 渋谷で新しい視点と出会う2日間『SHIBUYA CAST.4周年祭』

4月24日、25日の2日間、渋谷キャスト開業4周年を祝う周年祭が開催されました。
渋谷キャストの周年祭は、一般的な商業施設の周年イベントとはひと味ちがう、広場や都市のあり方を実験する催し。さまざまなクリエイティビティが交差し、街にひらかれた場を目指す渋谷キャストらしく、毎年4月に多彩でエッジの効いた企画を打ち出してきました。

 

今回実施されたのは、屋内外の2つのコンテンツ。広場では、2mのディスタンスを遊びに変えてたのしむ「PLAY DISTANCE」、多目的スペースではクリエイティブ思考で都市の未来を考えるトークセッション&ワークショップ「202X URBAN VISIONARY vol.7」がそれぞれ開催されました。

 

コロナ禍における生活も、はや1年。昨年は惜しくも開催を見送った周年祭ですが、今年はいまこの時だからこそできる企画を模索し、無事に開催をむかえました。心地いい春の陽気のもと、街ゆく人のさまざまな表情がうまれた2日間の模様を、ダイジェストでお送りします。

 

【CREDIT】
▶︎SHIBUYA CAST. 4周年祭
Planning & Produce: co-lab, Ground Level Inc.
Direction: 熊井晃史
Operation: シアターワークショップ
Graphic Design: BAUM LTD.

 

<PLAY DISTANCE - MAKE PUBLIC ->
企画:株式会社グランドレベル
空間デザイン:長岡勉 / POINT
デザイン制作サポート:VUILD / EMARF
ワークショップ:みんなのダンボールマン

 

<202X URBAN VISIONARY vol.7>
企画主体:パノラマティクス、 春蒔プロジェクト株式会社/co-lab
渋谷キャスト周年祭担当:co-lab

 

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広場へ移動すると、あたりは一面カラフルな世界。「PLAY DISTAMCE」の企画は、ソーシャルディスタンス=2mをポジティブに遊び倒すのがねらいです。2mの糸電話や小屋、丸いテーブルなど、ビビッドなカラーの様々な道具や仕掛けであたりは彩られていました。

 

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広場の一角では、身近なダンボールを使ってクリエイティブなアイデアを共有していく「みんなのダンボールマン」によるワークショップが随時開催されていました。何やらたのしそうな雰囲気に吸い込まれていく子どもたち。お面のような小さなグッズから、大人と協力して2mの巨大な帽子をつくったり、笑い声と笑顔のたえない空間がひろがります。 そのすぐ隣には、ダンボールでつくったオリジナルの扇を投げて遊ぶ「投扇興」のブースもあり、こちらも子どもたちに大人気でした。

 

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「DISTANCE MONSTER」と名付けられた、2mのオブジェも人々の目を引きます。地面には花のような形にカットされた木片がたくさん。この木片をオブジェのくぼみにはめたり、木片同士をはめて枝のようにしていくと、たしかにモンスターのような、不思議なかたちが空へと伸びていきます。

 

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その隣には、メッセージを書いたテープをくくりつけられる2mのツリーが。自分のこと、家族、友達、社会のこと。先の見えない状況で、街ゆく人々が抱えるひとつひとつの思いが、春の風になびいていました。

 

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「PLAY DISTANCE」で印象的だったのは、時間の経過と人の流れにともなって、空間が徐々に「活きた場」へと変化していくこと。何より、仕掛けを手がけたデザイナーやプランナーたちの意図を超えて、空間を自由に遊ぶ子どもや大人のふるまいは、確実に渋谷の中心を彩っていました。

 

 

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続いては、「URBAN VISIONARY vol.7」の現場へ。東京の再開発ラッシュの最中、「都市開発はもっとディベロッパー間で議論し、共有しながら進めるべきではないか」という提言から2019年に渋谷キャスト発で生まれたこの試み。虎ノ門ヒルズフォーラムや大手町の3×3Lab Futureといった各地の会場をリレーしながら回を重ね、7回目の開催となる今回は、再び出発地点である渋谷キャストにゲストが集結しました。

 

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今回は公開型のトークセッションの前に、初めての試みとなるディベロッパー各社限定のワークショップが非公開で開催されました。会社の垣根を超え、各社が連帯し行動を起こすことをかねてより目標として掲げてきたURBAN VISIONARY。ついに今回、これまでの6回の開催を通して深めてきたビジョンの共有からさらに一歩踏み込んで、具体的なアクションの提案や実行につなげるプロセスが加わりました。

 

通常、各社から1名が代表で登壇するのがURBAN VISIONARYのスタイルでしたが、ワークショップには各社さまざまなポジションで開発に関わる方々が参加。より多角的かつ活発な議論を生み、現実的な行動へつなげていくことをねらいとしました。

 

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Graphic:松本花澄(グラフィックカタリスト・ビオトープ)

 


参加したメンバーはまず、テーマごとにグルーピングされました。今回設定されたのは「文化・エリアマネジメント」「Central Business District(中心業務地区。街や都市で特にオフィスや商業店舗が集中している地区)」「ICT・CITY-OS(都市OS。都市に存在する膨大なデータを収集・分析した、他の自治体や企業・研究機関と連携するためのプラットフォーム)」の3つの大きなテーマ。

 

これらのもと、各グループは①Theory of Changeのワークショップ→②Logic Modelの作成→③フリーディスカッションという流れに沿って、合間に全体共有の時間をはさみながら議論を進めていきました。 ①は、ポジティブ・ネガティブ問わず、フラットにテーマにまつわる現在の状況や制度、関係性などを整理しながら、最終的なゴールを導くもの。②は、ある施策が目的を達成するに至るまでの因果関係を論理的に整理する手法です。 東京が目指すべき不動の、究極の行き先=北極星とは何か、そしてその実現には何が必要なのか。各チーム、まずは壮大なビジョンを掲げることからはじめ、具体的な行動やアウトプット、その指針を詰めていきます。

 

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3時間という限られた時間の中で、一気に議論を進めアウトプットを固める怒涛の進行。また、非公開での実施だったため、メンバーからは本音もこぼれやすく、各チームの議論は大いに盛り上がりました。

 

それぞれからは、東京が目指すべき究極の姿として「一人ひとりが自立して、やりたいことができる寛容なTOKYO」、「Central Business Districtが有機的につながるTOKYO」、「心が踊る、個人の活躍の幅が拡がる、地方とシームレスにつながったTOKYO」の3つが共有されました。その実現に向けて、ディべロッパーとしてどのようにふるまうべきか、必要なプラットフォームのあり方についてもさまざまな意見が挙げられました。

 

終盤のフリーディスカッションでは、まだまだ東京の開発においてはディベロッパー視点が強いという意見も。そもそも日本では、都市計画とビジネスのつながりが見えづらいという大きな課題があるものの、ユーザーにとって本当に価値あるものは何か、その視点を強化し、各社が自社内に閉じることなく、他社や教育・研究機関と連携していくことが重要であり、そのためには、それぞれのディベロッパーが、自社のリソースをオープンにし、イノベーションにつなげるという前のめりな姿勢が必要という指摘もなされました。

 

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トークセッションは、今回もURBAN VISIONARYの発起人であるパノラマティクス主宰・齋藤精一氏が進行を務めました。ファシリテーターは、今回初の参加となるリージョンワークス代表社員・後藤太一氏と、日経クロステック/日経アーキテクチュア編集委員・山本恵久氏、実行委員会の春蒔プロジェクト代表/co-lab運営代表・田中陽明氏。そのほか、登壇者として森ビル、三菱地所、三井不動産、東急、東日本旅客鉄道ら開発事業者から5名が参加しました。

 

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これまで、一貫して「ビジョン」を議論し続けてきたURBAN VISIONARY。今回も、「『東京』のあるべき姿」というスケールの大きいテーマが設定されましたが、ワークショップのアウトプットをふまえ、ビジョンを形にするための「アクション」を重点的に語り合うことが期待されました。

 

理想とする都市の姿をどのように実装していくのか。議論の中では、都市開発のDXをめぐる「誰もやったことがない挑戦だからこそ、そもそも良し悪しが判断しづらい」という、現場に立つ者としてのリアルな葛藤が挙げられる一幕もありました。

 

しかし、議論はそこでは終わりません。現状の課題は、何があれば乗り越えていけるのか、話題は前向きに手段を検討する方向性へ。参加の余地がうまれやすい基盤となるマスタープラットフォームの必要性、それをディベロッパー各社が連帯してつくれるのではないか、という意見も。さらには、都市計画・開発において行政に求める姿勢や、ディべロッパーの理想的な関わり方も議論され、いずれも「民だけでも公だけでもできない」からこそ、両者が一体となって計画・開発を行うべきであり、URBAN VISIONARYはその場になるべきという共通認識がつくられました。

 

ディスカッションと並行しながら、画面上で共有されていたのはグラフィックレコーディング。配信の視聴者に向け、難易度の高い議論の要点を凝縮させながら、リアルタイムで更新されていました。

 

画像Graphic:松本花澄(グラフィックカタリスト・ビオトープ)


充実した議論もいよいよクライマックスへ。締めの登壇者からのコメントは、ワークショップを含め、「これまでにない有意義な議論ができた」、「重要なヒントを得られた」という意見も多数。現場は今後の成果が期待できる、静かながらも熱い空気に包まれていました。今後もこうしたワークショップの形式も取り入れながら、URBAN VISIONARYの取り組みは続いていきます。
(トークセッションのアーカイブはこちらから

 

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依然として、気軽に人と会ったり、旅に出たりすることが難しい今。よりよく日々を過ごすには、身近な街の中で、どれだけハッとしたり、元気をもらったり、未来に思いを馳せたりできるかが重要なのかもしれません。
今回の4周年祭はまさにそんなきっかけに満ちていて、あるべき街と人の関係性のかたちを垣間見る、そんな場になっていたのではないでしょうか。

 

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