CREDIT

Planning & Produce: co-lab, Ground Level Inc.
Direction: 熊井晃史 | Operation: シアターワークショップ | Graphic Design & Edit & Writing: BAUM LTD.

OVER VIEW

できなかったことも、この場所の歴史をつくる
パンデミックの中で考えられた都市観のドキュメント

渋谷キャスト開業から3年。1、2周年に続き、2020年も開業日の4/28に合わせて3周年祭を実施するべく、年明けから議論が重ねられていました。

企画運営には2周年祭と同じメンバーが集結。昨年度の取り組みのアップデートを試みようと意気込んでいた矢先、新型コロナウイルスの流行が発生しました。「人と人が会う、集まる」という、これまで当たり前だった日常の営みが大きく揺るがされる事態となり、周年祭含め国内の多くのイベントが開催困難な状況に陥りました。開催時期を延期するという選択肢も残しながら、運営メンバーは慎重な議論を重ねてきましたが、社会情勢を鑑み3周年祭の開催は見送ることに。

その後運営メンバー内では、開催はできなかったものの、3周年祭に込めようとした思いを別の形で届けることはできるのではないか、これから続いていく長い渋谷キャストの歴史の1つとして、何か痕跡を残すことはできないかという意見が挙げられました。

そこで、惜しくも開催できなかった3周年祭の企画の裏にあった運営メンバーの思い、仕掛けられようとしていた新たな試みについて、その記録をここに残すこととします。

landscape!!!

自分があの人が"風景"になる その"風景"が街をつくる

3周年祭の全てのコンテンツを包括するコンセプトとして掲げられたのは「landscape!!!」というキーワードでした。

2019年度は「Readable!!」というコンセプトが掲げられていた周年祭。そこでは渋谷キャストの大階段が大きな斜面に様変わりしていたり、広場には芝生が敷かれてスツールが置かれたり。人々の創造性をそっと引き出す、さまざまな「補助線」が空間に散りばめられ、大人から子供まで思い思いに時間を過ごす豊かな光景を垣間見ることができました。訪れた人々が目の前に広がる景色を「読み解き」、主体性を持って街や自分自身の新たな一面を「発見」してもらいたい。そんな場を作ることが2周年祭の狙いでした。

3周年で挑戦したかったのは、その2周年祭の試みにさらなる深みを持たせること。以降のパートで紹介する屋内外の企画内容からもうかがえるように、”landscape”という言葉に託されたのは、“風景”それ自体を作り出す営みに多くの人々を巻き込み、街の新しい風景を生み出したいという思いです。

使い道が定義されていないさまざまな素材と渋谷キャストのオープンな空間。ふらりとそこを訪れた人々が自由にそれらで何かを生み出し、遊び、またそれを別の人が遊んでいく。そんな、街の新しい風景を生み出す営みにゼロから参加してこそ、街と人との関係性は深まり、ひいては街自体の魅力も上がっていくのではないか、という仮説のもと、私たちは人々の主体性そのものを引き出すような仕掛け作りに取り組んでいたのです。

CONTENTS

1. 202X URBAN VISIONARY vol.4

コロナ禍で変容する都市。再開発ラッシュの行方はどうなる?

Planning & Produce: co-lab

2019年から始まり、今回で4回目を迎える、クリエイティブ思考で未来の都市を考える公開会議「202X URBAN VISIONARY」。本来であれば渋谷キャスト屋内の多目的スペースで行われるはずでしたが、今回はオンラインでの開催となりました。

新型コロナウイルスによる都市生活の激変を受けて、「都市の変容」というテーマを主軸に置きながら、クリエイターや建築家、都市開発に関わるデベロッパーがそれぞれの視点で語り、エネルギッシュな議論を展開しました。

当日の詳細はこちらのリンクから。
https://shibuyacast.jp/journal/detail/URBANVISIONARYvol4/

2. SHIBUYA HYPER CAST.2

ありえないけど、ありえるかもしれない都市の未来像

Produce: noiz

屋内での展示企画として、実在する渋谷キャストをベースに構想された「SHIBUYA HYPER CAST.2」。コンピューテーショナルな手法を積極的に駆使し、建築を主軸に幅広いジャンルで国際的に活動する「noiz」が手がけています。

2019年の渋谷キャスト2周年祭で制作された「SHIBUYA HYPER CAST.」から派生する形で制作された本作。現在noizが実現に取り組む次世代型スマートシティの要素が盛り込まれ、実際には存在しないものの、「存在し得る」垂直型都市の姿が表現されました。

環境的要因に基づく複雑な建築の形状や、人やロボット、ドローンがシームレスに関わりあう風景。次世代型スマートシティ推進の第一線で活躍するnoizだからこそ描ける未来都市像を垣間見ることができます。

3. MAKE PUBLIC!!!

渋谷で、自分で、公共をつくる

Produce: Ground Level Inc. / Design: 長岡勉(POINT)

屋外の企画を担当したのは、2周年祭でも広場の新たな使い方を提案したグランドレベル。「1階づくりはまちづくり」を掲げ、街の1階のポテンシャルと人の能動性を引き出すことを得意とする彼らは、今回も広場や大階段といった普段は通り過ぎてしまうだけの空間を、人々のクリエイティビティを引き出す場に彩ることに取り組みました。企画のアイデアは、以下のようなイメージで実現される予定でした。

鮮やかなカラーが施された木材や布など、個性的な素材が集められた「マテリアルストレージ」が広場に出現。お気に入りのものを選んだら、隣の「ポップアップ工房」へ移動して、マテリアル同士をくっつけたり、巻いたり、つり下げたり…と、DIYしながらオリジナルの作品を作ることができます。それぞれの作品を広場に散りばめていくことで、空間が彩られていくことをイメージしました。

大階段には作品を持ってきて、遊ぶこともできるスペースも展開。画像のように、自らもゲームのパーツになって楽しめる仕掛けも組み込まれていました。

「Make Public」という言葉が示すように、これは人々が公共的な空間を自ら作り出す営み。また、そうした主体性を通じて街と広場、人とキャスト、人と渋谷の関係性を変容させていく試みでもあります。

広場の企画については、惜しくも3周年祭のタイミングで形にすることはできませんでしたが、渋谷キャストの実験的な取り組みの一環として、時期にこだわらずに実現のタイミングを改めることとなりました。


新型コロナウイルスの流行という未曾有の出来事によって、これまで当たり前とされてきた社会生活の多くの前提が覆される事態となりました。これをきっかけに、都市や街がどうあるべきなのか、そこで生活する私たち自身がどうあるべきか、さまざまな議論が進み、それによって変わっていくものも多くあるでしょう。

しかし、渋谷キャストとして、渋谷という街の新たな風景、カルチャーを多くの人々とともに作っていきたいという思いはこれからも変わることはありません。未だ先の見通しを立てづらい日々が続いていますが、今回私たちが温めていた企画は、社会の情勢や新しい生活様式と向き合いながら実施できるチャンスを探っていきます。

CREDIT

Planning & Produce

co-lab / Ground Level Inc.

Direction

熊井晃史

Operation

シアターワークショップ

Graphic Design & Edit & Writing

BAUM LTD.