ジャーナル
<EVENT REPORT>
想像と創造が膨らむひとときを楽しむ 『SHIBUYA CAST.周年祭 Readable!!』
さまざまなクリエイティビティが集い、新しいアイデアやビジネスを誘発する渋谷キャスト。2017年4月28日の開業以来これまで、入り口にある広場を中心に、VRを体験するイベントや、子どもと大人が渋谷にあるものを使い、創造性を発揮して遊びを作り出すワークショップなど、実験的な取り組みを行ってきました。このたび開業2周年を迎えるにあたって、4月26日〜29日の間、「渋谷キャスト周年祭 Readable!!」が開催されました。
4日間に渡る期間中、渋谷キャストスペースでは都市の未来を考えるトークセッションとインスタレーション「202X URBAN VISIONARY vol.1」が、渋谷キャストガーデンでは、これまでにない渋谷での過ごし方を体験できる「SHIBUYA “YOUR” PARK」が実施されました。さまざまな街の使い方ができる都市の実験の場として企画され、これからの都市、そして渋谷を考え、語り、楽しむ機会に溢れたイベントの様子をレポートします。
プログラムの1つ、「202X URBAN VISIONARY vol.1」は、昨年の周年祭『SHIBUYA CASTING!』にて行われた「渋谷の未来像をコンピューテーショナルデザインで考える」をテーマとして行われたディスカッションが起点になっています。noiz・豊田啓介氏、ライゾマティクス・齋藤精一氏、日経×TECH・山本恵久氏、東京急行電鉄・山口堪太郎氏の4名のスピーカーで行われ、コンピューテーショナルデザインの視点から考える渋谷の未来について議論がなされたのが、昨年でした。
今年のこの企画は、「日本の都市開発はもっとディベロッパー間で議論し共有しながら進めることが大切なのでは」という齋藤氏の提言に端を発し、昨年もスピーカーを務めた前述の4名に加えて、各エリアで都市開発、エリアマネジメントを行う森ビル、三菱地所、三井不動産など大手ディベロッパー担当者、国土交通省の行政関係者など、競合とされ、公の場で一堂に会することが滅多にないメンバーたちが集結しました。
トークは、ディベロッパー、行政陣がこれまで取り組んできた都市開発やこれからの構想を話しつつ、豊田氏、齋藤氏による鋭い質問によって緊張感のある展開に。はじめこそ立場を意識した控えめな発言が見られましたが、トークが深まるにつれて普段から現場に立っているリアルな声が行き交い、熱量の高い議論になりました。
豊田氏率いるnoizメンバーと、ライゾマティクスの齋藤氏が制作したインスタレーションでは、今後の示唆となるような東京や渋谷の未来の都市ビジョンを提案。
noizは、法規やコスト、技術の制限によって、あるべき未来の都市像を体現しきれていない現在の渋谷の姿から、現実的な制限を取り払った仮想的な都市像を表現。
齋藤氏は、日経アーキテクチュア提供のリサーチデータを活用し、今の東京と個人妄想を投影した202X年の東京を表現したインスタレーションを制作。訪れた方々は、数年後、数十年後の未来の都市の姿を想像していたのでしょうか。じっくりと、豊田氏と齋藤氏が制作したインスタレーションに見入っていました。
渋谷キャストガーデンの広場で行われた「SHIBUYA “YOUR” PARK」は、広場に芝生が敷かれ、大小さまざまなバウムクーヘンのような家具が並びました。期間中は多くの人が訪れて家具の上に並べられた本を手にとって芝生の上で本を読みながらくつろいだり、楽器で音を奏でで遊んだりと、思い思いに広場での過ごし方を創り出し、楽しむ姿が散見されました。
また、自分が楽しいことを無料でふるまう“マイパブリッカー”たちが登場し、マジックやバルーンアート、DJや場の即席新聞などを来場客にふるまっていました。流れる音楽に合わせて即興で子どもが踊り始めたり、歌を披露し、それに呼応する形でアカペラが始まるなど、偶発的なグルーヴ感が発生していました。
大階段は斜面に変身。普段では見られない光景、体験できないアクティビティに、写真に収めたり、ござや座布団、シートなどで斜面を滑り降りて遊んでいました。
大階段脇や広場では数組のアーティストが歌や演奏を披露し、近くを通りがかった人は足を止めてしばし耳を傾けていました。
さらに、27日〜29日の3日間、渋谷キャスト内のco-labでは、カナダのモントリオールを拠点とするマルチメディア・エンタテインメント・スタジオ、Moment Factoryによるインタラクティブ技術の体験工房「Protoroom」が公開されました。
co-lab渋谷キャストに入居しているMoment Factoryは、マドンナのスーパーボウルでのパフォーマンス演出やサグラダ・ファミリアでのプロジェクションマッピングなど、映像・照明・音響・特殊効果といった多様な専門技術を持つアーティスト集団なのです。
Protoroomにはスキャナーやキネクト、サーマルカメラが設置され、参加者は画面への接触やジェスチャーといった自らの動作によって反応する体験に引き込まれていました。
大階段に斜面を作り、一風変わったスツールを並べた広場や未曾有のディベロッパー対談、未来の都市像を描いたインスタレーションなど、挑戦的な試みが多かった2周年祭。
訪れた方のクリエイティビティが発揮され、広場の使い方や過ごし方を生むことができ、渋谷キャストのさらなる可能性が感じられるイベントとなりました。